ナノイーで空気の質を向上し、IoTで利便性を訴求

 国内だけでなく、海外も含めて空調事業でいかにパナソニックが差別化を図っていくのか。「注目しているのは『空質』です」と高木事業部長は話す。

「人類は基本的に、健康に対する潜在的な欲求を持っています。そこで注目されるのは食べ物や水、そして空気です。日本では基本的に水道水が飲めますが、ミネラルウォーターをガソリンの2倍の値段で買う時代です。人が1日に消費する量は水が約1.2kgで、食べ物が約1.3kgに対して空気は約18kgといわれています。われわれが健康で快適な暮らしをしようとすると、これからは空気の質が非常に大事になります」(高木事業部長)

 空気の質を高める上でパナソニックが強みとしているのが自社で開発した「ナノイー」だ。

「ナノイーは水に包まれたOHラジカル(酸化力の強い活性酸素)で、600秒(10分)以上空気中に留まることが出来るのが大きな特徴です。花粉やアレル物質、ニオイ、カビ、細菌・ウイルス、PM2.5、保湿など七つの効果を持っています。約10倍のOHラジカルを生成するナノイーXを搭載した家庭用エアコンEoliaは、エアコンで初めて日本アトピー協会推薦品となりました。また、デバイスとしては鉄道車両や自動車メーカーにも採用されており、トヨタ自動車様、本田技研工業様、ジャガー・ランドローバー様に標準搭載されています」(高木事業部長)

 ナノイーデバイスはヘアードライヤー「ナノケア」シリーズにも搭載している。ナノケアシリーズの最上位モデルは実勢価格2万円を超える高額商品ながら、シリーズ発売以降の国内累計販売台数が1200万台を超えるなど、女性を中心に人気のブランドとなっている。19年には「ナノイー」水分発生量が従来の約18倍にアップした高浸透「ナノイー」デバイスも開発した。

「ナノケアシリーズは中国でもご好評いただき、大ヒットしました。今年3月には中国専用のプレミアムモデルを販売しました」(高木事業部長)というように、中国でもナノイーブランドの浸透が進んでいるようだ。

 もう一つ、パナソニックが強みとして訴求しているのが「IoT(もののインターネット)」だ。

「家庭用エアコンには無線LAN搭載モデルを着実に増やしていますし、業務用エアコンでは無線LAN以外でネットに接続する方法も提供しています。AV機器や通信機器、情報機器など社内にノウハウがかなり蓄積されており、アマゾンやグーグルなどのクラウドプラットフォームとの連携でも数多くの経験を重ねています。IoTではセキュリティーに不安を感じる方もいるかもしれませんが、全社組織として本社直轄の製品セキュリティーセンターにて、セキュリティーを一手に管理し、お客さまに安心していただける商品を提供しています」(高木事業部長)

「IoTといっても、それはあくまでも手段であって、いかにお客さまへの価値を生み出すかが重要です」と高木事業部長は続ける。

「外出先から帰宅する前に電源を入れておけば、急速運転をしなくて済むので省エネになりますし、一人一人の使い方をAIで学習させてより快適な運転を実現したり、ウェザーニューズの気象情報と連携して室温制御や室内空気清浄をするなど、家庭用エアコンではさまざまな利便性を提供しています」(高木事業部長)

 IoTはユーザーの利便性向上に役立つだけでなく、保守やメンテナンスにも役立つと高木事業部長は語る。

欧州で販売するヒートポンプ式温水暖房機「Aquarea」欧州で販売するA2W(ヒートポンプ式温水暖房機)「AQUAREA」

「業務用エアコンではIoTを遠隔監視や故障予知などに活用しています。北欧などで生活を支える『Air To Water』では、万が一真冬に動かなくなったら大問題になります。地域によっては家庭用でもIoTを遠隔監視や故障予知に活用することも考えられます。IoTが利便性向上だけではなく、人間が生活していくための最低限のインフラ構築に役立つ可能性もあります」(高木事業部長)