英国は今脱炭素化を目指し、どの国よりも早くCO2排出量ゼロを法制化。世界最大規模の洋上風力発電設備を保有し、原子力発電所の廃止措置で実績を重ねるなど、低炭素へ積極的に取り組みつつ、経済成長を実現している。この英国の先駆的な取り組みは、日本にどのような価値をもたらすのか? 駐日英国大使館に英国の最新事情を聞いた。
気候変動への取り組みを加速、世界の低炭素化をリードする
エネルギー・気候変動政策担当部長
英国が脱炭素化で世界をリードしている事実は、日本ではあまり知られていない。
「英国議会は2008年に気候変動法を制定し、50年までに1990年比80%削減という法定目標を定めました。19年6月にはさらに一歩踏み込んで、50年までに二酸化炭素ネット排出量をゼロにするという改正法案を可決。先進7カ国(G7)の中でCO2のネット排出量ゼロを法制化したのは初で、今国として気候変動への取り組みを加速しています」
そう説明するのは、ナオミ・カウワン エネルギー・気候変動政策担当部長だ。
英国の低炭素化への取り組みの特徴は、経済成長を図りながらCO2排出量を減らしていく「クリーン成長戦略(Clean Growth Strategy)」を掲げていることにある。
「90年から16年までの間、英国はCO2排出量を42%削減しましたが、同時期に経済は67%成長しました。政府はクリーンな成長の実現に向け、クリーン成長基金(Clean Growth Fund)などに大型の投資を行い、クリーン技術のイノベーションや商業化を支援。その結果、低炭素経済は他の経済の4倍の速さで成長を続けており、低炭素セクターの雇用も上昇、低炭素に関わるサービスや製品の輸出も増加しています」
その中心となっているのが、世界最大規模の洋上風力発電である。
英国の再生可能エネルギーの電力は、同国の年間発電量の3分の1以上を占めている。その再生可能エネルギーの中で、洋上風力発電の設備容量は18年末に8GW(=800万kW 大きな火力発電設備1基の出力は約100万kW)に達し、世界一(※1)の規模を誇る。
英国の最初の洋上風力発電は、イングランド北東部のニューカッスル沿岸に00年に建設され、現在、8カ所に洋上風力発電のクラスター(集団)がある。以前は港町として栄えていたリバプールやハルなど、現在は経済復興が必要とされる沿岸地域での導入が進んでいる。
※1 RCG(Renewables Consulting Group)調べ