カーペットの根元に
たまるアレルギー物質
「Whiz」は、主にカーペットなどの床清掃を目的とする乾式バキュームクリーナーで、自動運転技術により自律走行する。初回に清掃したいルートを手押しで教えると、2回目以降はスタートボタンを押すだけで記憶したルートを自律清掃する。複数ルートを記憶するので、フロアを移動させてもすぐに清掃を始める。
清掃能力については、1週間使えるはずの紙パックが、初回30分でいっぱいになることが多いという。つまり、それくらい、今までカーペットのごみが取り切れていなかったということだ。だが、清掃員がサボっていたわけではない。限られた時間内で清掃を終わらせるためには、目に見えて汚れている部分を入念にやらざるを得ず、汚れていないように見える所は簡便にやるしかない。
広いカーペットの床面は、何かがこぼれた跡があるとか目に見えるごみが散らばっていない限り、多くの場合は簡便に清掃を行う箇所だ。だが、目には見えなくてもカーペットのパイル(毛)の根元にはアレルギーの原因となるダニの死骸、バクテリア、花粉といった有害物質が大量にたまっている場合が多い。最も掃除が必要にもかかわらず、最も手が回らなかった箇所といえる。ここをロボットに任せられれば、空間の清潔さは、格段に増すのである。
執行役員 訪販グループ 戦略本部長 藤岡利義
しかし、このことに気が付いているのは、現場を守るダスキンのような業者であり、発注元のビルやホテル・旅館といったクライアントの認識はまだまだ低い。そこで、「見た目はきれいなカーペットにも大量のごみが沈んでいることを『Whiz』を使って示せれば、お客さまの掃除に対する認識は必ず変わります。いわば“汚れの見える化”が重要なのです」と藤岡本部長は期待する。
日本は清潔、日本人は清潔好きとよくいわれるが、清潔さは数値化が難しい見た目や感覚的なものだ。「“汚れの見える化”は、見た目の清潔さだけでなく、本当の意味での清潔さを測る助けになります。『Whiz』を導入している施設は、アレルゲンなどの有害物質を除去してお客さまの健康にも配慮している、という清潔さについての一つのスタンダードを作ることができるのではないかと考えています」(吉田常務)。
ロボットは
清掃員を補完する
ただ、清掃ロボットを導入するとなると、清掃員も清掃業者も「ロボットに仕事を取られる」と受け止めがちだ。
「清掃ロボットは、人の仕事を奪うものではなく、清掃員に掃除のスキルを生かせる仕事に集中してもらうためのものだと理解してほしい」と吉田常務は語る。つまり、清掃員の仕事を補完するツールと考えた方がいいというわけだ。
そもそもロボットが行えるのは床掃除だけで、手すりや階段といった複雑な形状の場所は、人手に頼るしかない。今後、ロボットの性能がさらに向上しても、代替できる仕事はせいぜい2~3割程度といわれるが、藤岡本部長は「それで十分」だと言う。
「床掃除は単純作業としてロボットに任せ、サービススタッフは専門的な技術を要する箇所の清掃に注力する。清掃には、それぞれの箇所や素材によってふさわしいやり方があり、その技術は人の手でしかできないものです。そうした技術を駆使してきれいな空間を実現する清掃員には、誇りを持ってほしい。人とロボットが一緒に働いてこそ、効率的に高品質な清潔さを実現でき、働く喜びを感じられるようになるはずです」
「Whiz」は、清掃を行う人も、またそのクライアントにも幸せをもたらすための強力なツールになるだろう。