大阪発祥の名門物流企業・鴻池運輸。伝統を守りつつも、事業多角化を核に事業拡大を続ける同社が、新たな成長に向けターゲットに据えたのがインドだ。インドでも”鴻池流”を貫く。
“ものづくり”のDNAで多角化を推進
鴻池運輸
鴻池忠彦・代表取締役兼社長執行役員
鴻池忠彦・代表取締役兼社長執行役員
鴻池運輸は2020年、創業140周年を迎えた。日本でも有数の老舗物流企業だ。13年には東証1部上場を果たし、19年3月期の連結売上高は約3000億円と陸運系物流企業の中で大手の一角を占める。
同社の特長は、その事業領域の広さにある。物流事業では食品を中心とした定温物流や医療物流などを得意とする一方、近年では空港グランドハンドリング事業や食品加工事業などにも進出し、事業の幅を時間をかけて拡大してきた。
鴻池忠彦社長は「当社は長年、大手鉄鋼メーカーや大手飲料メーカーの生産工程請負業務を担っており、通常の物流企業に比べて“ものづくり”のDNAを色濃く持っています。そのため、物流を核にその両端にある仕事を事業化して付加価値を高めることを得意としています」と解説する。
例えば、食品加工事業では、19年4月に大阪木津卸売市場内に食品加工場を開設。急速冷凍技術を使って鮮魚などの食材を調理・加工する事業を開始した。同社が国内外に幅広く展開している冷凍冷蔵倉庫などのコールドチェーンネットワークとのシナジーを見越した、まさに“物流の両端を広げる”好例だといえる。
物流事業の他、空港グランドハンドリング事業や、冷凍技術を活用した食品加工事業などにも進出。事業の幅を拡大している
そして創業150周年に当たる30年の“あるべき姿”を描いた「2030年ビジョン」では、売上高を最大5000億円まで拡大させるとともに、さらなる事業の多角化を見据えている。
国内の現場作業省力化にも注力。同社の顧客であるサントリーの製品を扱う倉庫では、三菱ロジスネクスト製の自動フォークリフトの実運用を開始。サントリーとの連携を深めつつ、作業負荷の軽減と生産性の向上に努めている
「事業のスタンスが広ければ広いほど、経営基盤の安定化につながります。安定という支えがあればこそ、さらなる挑戦が可能になります」と、鴻池社長は持続的な成長に向けた青写真を描いている。