目で見て分かることを徹底指導する
動機が不純でも結果が良ければいい
――もう少し詳しく伺います。環境整備は、毎朝30分、不要なものを捨て、掃除をして、整頓する。備品は番号を打って管理され、収まるべき場所が決まっていて、例えば、スプレーなどは使って元の場所に戻すとき、吹き出し口の向きまでそろえるのですね。
整頓を徹底すると、みんな決められたものを決められた所に置くようになる。そうやって次第に価値観がそろっていく。ここで重要なのは環境整備というのが目に見えるということです。目で見てできているかどうか分かるから指導できる。しかし多くの会社は、目では見えない「心」を指導しようとする。それで失敗するんです。
例えば、仕事に対するやる気マインドの数値が10だった人を教育して30にしようとしても、30になったかどうかを確認する仕組みはない。それでどうやって指導できるんですか。目で見て分かることは誰でもまねできて、誰に対しても同じように指導できる。みんなが決められたことを決められた通りにやるうち、心がそろっていく。このことをずっと社長としてやり続けているんですよ。
ただ、みんなで環境整備をしましょうと言っても、勝手にやるようにはなりません。面倒なことはできるだけやらないで済まそうとするのが人の性です。でも、環境整備は賞与の評価に直結しているので、みんなやらざるを得ない。本当はやりたくないが、お金がかかっているのでみんな必死にやる(笑)。
――日本社会では、お金で釣るのは動機が不純になるので良くないというような風潮がありますが。
動機なんて不純でもなんでも構わない。結果さえ出ればいいんですよ。武蔵野の従業員はみんなお金で釣られるのが大好きです。今朝も朝礼で「年商が75億円を超えたら、毎月1万円の給料を全従業員に上乗せする」と言ったら、途端に社員の眠たげだった目が、かーっと見開かれた(笑)。それが正しいんです。お金のためというのは本音。本音が大事。形から入ってやり続けていくうちに、自然に心がついてくる。動機は清くなくても結果が清ければいいんです。
――ということは、賞与に直結できるように、環境整備にも目に見える形で評価する仕組みがあるわけですね。
評価の方法も大切です。毎月環境整備点検をして、チェックリストに基づいて点検して点数を付けます。ここで一番大事なことは、「こういう項目でチェックしますよ」と公表していること。チェック項目にないことは採点しない。多くの会社はチェックすると「これは駄目だ、もっとこうしろ」とあとから指摘する。それでは「後出しじゃんけん」です。だから社員やスタッフから文句が出る。武蔵野はルールを先に説明してある。ルールを変える場合も、必ず公表する。評価基準を透明化している。公明正大で透明な評価をすることが最も重要です。
――評価の仕方も徹底しています。
どういうルールでチェックするのかという勉強会を課長職以上に課しています。これに出ない人は、反省文を書かせる。反省文は2枚で始末書になり、始末書2枚で賞与が半分になります。それで、仕方なく(笑)勉強会に全員来る。すると、評価の基準が合ってくるんです。