工場のデジタル化と
遠隔操作、隊列走行
今後、労働力人口が減少する中で、日本企業には生産性の向上が求められている。こうした観点でも、5Gに対する期待は大きい。
ソフトバンクは大成建設と共に、現場の建設機械を遠隔操作する実証実験を行った。遠隔操作においては、0.5~1秒の遅延があると事故につながる可能性があるといわれる。4Gではリスクが高い。
「4Gに比べて、5Gは桁違いに高速で遅延が少ない。リモート操作は5Gならではの事例です。実用化されれば、熟練者はセンターから数台の建設機械を操ることもできます。遠方の現場に出向く必要がないので、移動時間も節約できます。1人当たりの生産性は何倍にもなるでしょう」と藤長氏は話す。
また、住友電気工業とは、工場におけるアナログ業務のデジタル化の実証実験を進めている。例えば、設備のアナログメーターをカメラでモニタリングし、5G経由でセンターに送信した画像データをデジタルの数値に変換。巡回頻度を減らせるほか、手作業の入力も自動化できるので大幅な業務効率化が可能だ(図1)。アナログ業務のデジタル化は、次世代への技能継承にも役立つだろう。
物流分野では、自動運転によるトラック隊列走行のトライアルが行われている。低遅延の車車間通信ができるので、走行時にも高い安全性を確保することができる(図2)。
「ドライバーが運転する先頭車両の走行ルートを、後続車がなぞって走ります。今回は、トラック3台の実証実験だったため、1人が3台分の荷物を運ぶことになります」と藤長氏。ドライバー不足は、今後さらに深刻化することが予想される。今のうちに、こうした準備が必要だ。
多様な産業分野のパートナーと実証実験を進める一方で、ソフトバンクは5G時代をにらんで組織強化を進めている。
「2年半前にデジタルトランスフォーメーション本部を立ち上げ、お客さまと一緒に課題解決に取り組む体制を整えました。お客さまがまだ気付いていない課題が、それぞれの現場に埋もれていると思います。それらを顕在化させ、知恵を出し合いながら解決していきたい。そのために、顧客接点を担う営業や技術などの分野の人材への投資を大幅に拡大しています」