遠くの店に出かけて買い物をすることが難しくなっている昨今、ECサイトを利用する人が急増している。スマートフォンを手に、デジタルで情報収集することが当たり前な消費者が増えたこれからは、小売業はリアル店舗だけでなく、オンラインでの顧客接点を用いた活動へのシフトが求められる。今後、日本の小売業は、ビジネスをどのように再構築するべきだろうか。

海外先進企業が目指す「ユニファイドコマース」とは何か

 小売業を取り巻く最新トレンドを表現する言葉として、国内で最もよく知られているのが「O2O」(Online to Offline、オンラインとオフライン間の相互送客を促すこと)である。最近ではO2Oの次に浸透する概念として、中国発の「OMO」(Online Merges with Offline、スマートフォンを中心にオンラインにオフラインを融合した体験提供を目指すこと)にも注目が集まっている。

 実は5年ほど前から、海外の先進的な企業はこれらの考え方をさらに発展させた「ユニファイドコマース」(統合コマース)の実現を目指している。すでに米国でも成功事例が登場し始めた。

 ユニファイドコマースは、O2OやOMOと同様に“オンラインとオフラインを統合する”というコンセプトは共通するが、OMOにあってO2Oにはない「リアルタイム性」を重視していることに加え、一人一人に最適な接客をすることにこだわる概念である。リアル店舗におけるスタッフとの楽しいコミュニケーション、ECでの思いがけない商品との出合いの両方を実現でき、かつ先進小売業が相次いで採用する「BOPIS」(Buy Online Pickup In Store、店頭受け取りサービス)のような、顧客の利便性向上のインフラを提供する。

 例えば、オンラインとオフラインの両方のチャネルを持つアパレル企業の店舗に、特定の顧客が来たとしよう。残念な例は、その顧客がオンラインで頻繁に商品を購入していることを知らず、新規のお客様として接客してしまうことだ。だが、もし店舗スタッフがモバイルデバイスを持ち、その顧客の購買履歴や好みを踏まえて商品を提案してくれたら、「このブランドは自分のことを理解してくれている」と好感を持つだろう。

 また、ロイヤルティの高い顧客にだけ特別なサービスや割引オファーを出すこともできる。海外の店舗ではよく「2つ購入したら1つ無料」(BUY 2 GET 1 FREE)などと書かれたワゴンを見かける。これはどの顧客に対しても同じオファーだが、顧客ごとに、割引率を変えるなどのオファーをモバイルデバイスに送ることができれば、その顧客とのつながりはより深まる。