ユニファイドコマースのためのテクノロジーソリューション

 ところで、CRM(Customer Relationship Management、顧客管理システム)のイメージが強いセールスフォースが、Eコマース製品を提供しているのはなぜなのだろうか。
 「本来のCRMは、あらゆる顧客接点から入ってくる情報を一元管理できるようにするための仕組みなのです」と笹氏は話す。顧客接点には、店舗スタッフ(人)、メール、ECサイト、モバイルアプリ、ネットワークにつながったデバイスなど、さまざまなものがある。セールスフォースが提唱する「Customer 360」とは、広義のCRMを実現するためのビジョンであり、顧客を中心に360度、どの顧客接点でやりとりをしても一人一人に対し、一貫性のある体験を提供する仕組みである。

 「Salesforce Commerce Cloud」は、このCustomer 360の中でもECサイトおよびモバイルコマースアプリの接点での顧客とのやりとりにフォーカスした製品であり、笹氏はその特徴を以下の「4つのS」で説明する。

・Storefront(ストアフロント)
受発注管理や倉庫管理のようなバックエンドシステムからフロントのECサイトを切り離し、商品の選択から決済までに特化した機能強化を行う。
・Scalability(スケーラビリティ)
急激なトラフィック増にも耐えられるクラウド型のインフラストラクチャーを提供する。
・Security(セキュリティ)
クレジットカード情報を扱うことから、ユーザー情報の漏洩やなりすましによる不正購入の防止など、セキュリティ対策には大きな投資を行う。
・Sustainability(サステナビリティ、持続性)
定期的な機能アップグレードで、EC運営企業に常に最新のテクノロジーを提供する。

 Customer 360のビジョンを体現し、ユニファイドコマースを実践している会社の例として、世界最大級のパーティーグッズ専門店を運営する、ある企業を紹介しよう。この企業ではECサイトだけでなく、北米で約850の店舗と、ハロウィーンなどのイベントに合わせた期間限定ストア(250~300店)を展開している。そのサイトには、ピーク時で1分間に5000件ものトランザクションが集中することも珍しくない。

 この企業では2016年からデジタル投資を積極的に行い、さまざまな顧客接点をCustomer 360でつなぐ仕組みの構築を進めてきた。その結果、実現したことの一つがソーシャルメディアPinterestからの商品購入である。

 例えば、Pinterestを眺めていたユーザーが気になるパーティー風景の画像を見つけたとしよう。画像の中の気に入った商品をクリックすると、購入サイトに遷移し、直接その商品を購入できるようにした。購入後は注文内容のメールが届く。配送先や注文内容の変更を行いたい場合は、フォームを入力する必要なく、そのメールへの返信で手続きを行うことができる。その依頼はカスタマーサポートに連絡され、確認した担当者がチャットで注文変更を実施できるようにもしている。この他、ECサイトで購入した商品を店頭で受け取れるサービス、逆に、かさばる商品や重い商品を店頭で購入したときに自宅に配送するサービスの展開も実現している。

 いま、社会が大きく変わりつつある。小売業もまたデジタルで武装することで、新しい価値を顧客に提供できるよう生まれ変わるべき時期だ。リアル店舗でもECサイトでも、さらにはソーシャルメディアアプリ、チャットボットやスマートスピーカーを使って注文しても、カスタマージャーニーのあらゆる段階で、スマートに顧客に対応できる――Salesforce Commerce Cloudは、そんなシステムを実現するための心強いツールなのである。

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株式会社セールスフォース・ドットコム
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