ブランド戦略は4P施策のPDCAを回す土台となり、
学習する現場組織へと変革させる

 企業資産を活用したブランド戦略は、マーケティング施策をコントロールする役割を果たす。マーケティングの4P施策は、とかく失敗をゼロにするのが難しく、成功と失敗を繰り返すものだ。

 社内関係者で確信をもって策定したブランド戦略があれば、施策が失敗するたびに戦略までは遡らず、4P施策だけの修正で済み、PDCAサイクル、すなわちPlan(計画)、Do(実施)、Check(点検)、Action(改善・是正処置)が効率的に機能する。

 一方、ブランド戦略があいまいなままにマーケティング施策を実行する企業は、失敗するたびに戦略にまでさかのぼって再検討せざるを得ない。その結果、施策が失敗するたびにブランド戦略が再検討され、消費者に一貫性ある体験を提供できず、施策は迷走を続け、ブランド価値とROIは低下していく。

 また、自社のマーケティング課題を正しく認識し、ブランド戦略によって解決する課題を明確にしておくことも重要だ。ブランド戦略の推進は目的ではなく、あくまでも課題解決の手段である。

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 顧客目線で企業資産を棚卸しして、分かりやすい概念に再構築してブランド提供価値へとまとめ上げ、4P施策に落とし込む。これら一連のプロセスを組織横断的に進めることで初めてPDCAサイクルが回り始め、成功と失敗から学び続ける組織になることで、ROIは高まっていく。

 これまでの説明の通り、ブランド戦略とは事業戦略と4P施策を整合させる核であり、経営者と現場双方のコミットメントが必要な重要テーマとなる。可能であるならば、企業内部で推進するに越したことはない。

 しかし、ブランドコンサルティングの活用により、他業界の事例も含めた幅広い知見と戦略セオリーを参照することで、避けられるべき失敗の回避、社内調整における弾よけ効果、第三者視点による企業資産の評価と活用(社内の人間には当たり前すぎて意識していないこだわりが価値であることは多い)など、外部支援で得られるメリットも存在する。

 多くの日本企業はブランド戦略をうまく活用できていないのが現状だ。「技術や品質で勝っているはずなのに、市場で負けている」と嘆く企業関係者は、ブランド戦略による解決も視野に入れて検討することをお勧めしたい。

 正しいブランド戦略は、利益ある成長を企業にもたらす力があり、多くの日本企業はうまく活用できていないのが現状だ。