コロナ危機にも
通用した事業分散
(右)ハクリ(剝離)ボトルはしょうゆでおなじみ。内袋が入っていて空気と触れにくく酸化劣化を防ぐ。食品以外にも化粧品やボディーソープなどにも用途が広がっている
同社の事業は「食品容器・包装」「医療・介護」「自動車部品」「住宅・工業」「物流・工場資材」に分かれており、メーカーの目で開発した高性能なブロー成形機の販売も手掛けている。長瀬社長は「どこかの時点で一つの分野に特化していたら、(利益の機会損失が減って)会社は間違いなくもっと大きくなっていたはず」と話す。「でも、事業を分けてリスクを分散した方がいいと考えました」。
今回のコロナ危機でもリスク分散が功を奏したが、一方で「以前とは景色が大きく変わってしまった」と危機感を強めている。
「人口減少により、日本の市場はシュリンクしていくことは想定していましたが、コロナ危機で消費者の生活様式が急激に変わってしまいました。そのことを認識して経営のかじ取りをしないと生き残ることはできません」
同社の生き残り戦略は国内市場、海外市場、海外戦略に分かれる。長瀬社長はこう説明する。
「国内市場に向けては新商品を開発し続ける技術があるし、他社が撤退した分野に残って残存者利益を得る仕組みも作ってあります。海外市場には国内の商品を横展開する計画です。海外11拠点のうち10拠点を人口増加の見込めるアジアに置いていて、原則として現地の人材に経営を任せています」
海外戦略の柱は新商品の投入だ。すでに発表している商品だけでも、燃費向上効果のある超軽量な車載エアコン用発泡ダクト、高度な成形技術が必要なため世界で2社しか製造できないハクリボトル、水面を活用する太陽光発電用のフロートシステム、従来の油圧式を電動式に替えた省エネタイプのブロー成形機がある。さらに来るべき未来を見通して開発した商品として、例えば開封せずにそのまま電子レンジで温めることができる食品包装「EMC(イージーマイクッカー)」がある。顧客自身が食品を温める無人コンビニで歓迎されるだろう。
「縁の下の力持ちでいい」と長瀬社長は謙遜するが、その力持ちはこれからも世界を支えることになりそうだ。