会社が従業員を信頼する。従業員も会社を信頼する。そんな強い絆で結ばれた組織「エンゲージメントカンパニー」にこそ、新たな時代を勝ち抜くヒントがある。国内はもとより、米国の人材開発、HR tech事情にも詳しいアックスコンサルティングの広瀬元義社長に、これからの働き方、企業と従業員の関係について聞いた。

 

米国人が考える、リーダーシップで最も重要なこと

なぜエンゲージメントの向上が従業員のパフォーマンスを高めるのか
広瀬 元義(ひろせ・もとよし)
株式会社アックスコンサルティング代表取締役
1988年「株式会社アックスコンサルティング」を設立。会計事務所向けコンサルティング、一般企業の経営支援、不動産コンサルティングを中心にさまざまな事業を展開。会計事務所マーケティングの第一人者。米国会計事務所マーケティング協会の正式メンバー。 米国HR tech事業に詳しく、ブーマーコンサルティングタレントサークル正式メンバー。HR関連のセミナーで多数講演。著書は45冊以上、累計発行部数は48万部を超える。

――米国の人材開発やHR techを長く研究されてきて感じることは何ですか?
広瀬元義(以下、広瀬) 20年ほど前、ワシントン大学でリーダーシップの研修を受けたときは、日本とは全然違うなと感じました。
 ワシントン大学で学んだリーダーシップとは、目的・目標に向かってフォロワーを動機付けること。そしてリーダーシップで最も重要なことは、一にも二にも「信頼」だと言うのです。三、四がなくて五にも「信頼」だと。驚きましたね。米国人のイメージがひっくり返りました。

――現在の日本の企業が重視すべきキーワードも、やはり「信頼」なのでしょうか?
広瀬 例えば先日、あるホテルで食事をしようとしたのですが、なかなか注文の品が出てこない。そこで注文はいったん断り、先に出ていた酒だけを部屋に持ち帰ってもいいかと聞いたんです。その後、「ちょっとお待ちください」と15分も待たされました。恐らく上司に聞きに行ったのでしょう。
 また別の話ですが、リモートワークで便利になった半面、書類に押印するためだけに会社に出社しなければならない。そんなことも実際にあると聞きます。
 この2つの話は全く違う内容ですが、根っこは同じです。つまり「会社が働いている人を信頼していない」ということです。それで客が不愉快な思いをしたり、従業員が無駄な時間を使わなければならなくなっているんですね。