放っておかれることで会社を辞めてしまう新入社員もいる
――人材開発の分野では今、「エンゲージメント」という概念が注目されています。
広瀬 エンゲージメントとは、会社と従業員の絆のことです。そしてそれを裏打ちしているのが信頼です。権限委譲というのは、会社が従業員を信頼していることの一つの形といえるでしょう。
例えば情報漏えいの問題でいえば、いくらシステムを堅牢にしても、情報を盗もうと思えばやり方はいくらでもあります。そうではなく、信頼で鍵をかけるしか情報を守る方法はないのです。
――このたび上梓された書籍『エンゲージメント カンパニー』(ダイヤモンド社)でも、その部分を強調されています。
広瀬 まさに強調したいのは「信頼」ですね。エンゲージメントがなぜ大事なのか。会社と従業員が固い絆で結ばれたエンゲージメントカンパニーをどのようにつくり上げれば良いのか。それがこの本で伝えたかったことです。
体系的かつ、面白く読めるように、架空のセミナー形式でストーリーが進行していきます。
――従業員との信頼関係構築のためには、特に「入社時」が重要とのことですね。
広瀬 新入社員は、初めて会社に来た日こそ形ばかりの歓迎を受けますが、後は放っておかれるケースも少なくありません。それが原因で辞めてしまう場合もあります。
そこで「オンボーディング」が大事になります。チームの一員として迎え入れられることで新入社員の緊張が緩み、その後の社内での良好な人間関係構築につながる。そして会社での安心感(心理的安全性)を得た従業員は、ミスを恐れることなく、伸び伸びと仕事ができるようになるでしょう。組織の価値観を共有できるようにもなります。