デジタル時代の営業改革(前編):戦わずして負ける商談が増える理由は、「捕捉率」にあり

捕捉率の改善が、売り上げのアップに直結する

 買い手側である見込み顧客が問い合わせなどによって売り手側との接触を図る前の段階で、その動向やニーズを把握しておかなければ、売り手側は気付かない失注を繰り返すことになってしまう。それは、売り上げを幾つかの係数に分解した以下の方程式からも、よく理解できるはずだ。

「SFAやCRMを活用することで受注率の改善に取り組む企業は増えており、単価アップについても継続的な課題として多くの企業が取り組んでいます。しかし、捕捉率を見落としているために、受注率や単価を改善しても、一定のところで売り上げが頭打ちになってしまうことに悩む企業が少なくないのです」(広瀬氏)

 逆にいえば、受注率や単価は変わらなくても、捕捉率を上げるだけで、売り上げは確実にアップする。下の表をご覧いただきたい。

 市場の総需要が100億円の製品を取り扱っているA社は、そのうち25億円を受注、15億円を商談の末、失注したと仮定しよう。この場合の捕捉率は40%となる。

(受注高25億円+失注高15億円)÷市場総需要100億円=40%

 60億円分のニーズ(見込み顧客)は捕捉できていないわけだが、このうちの4億円分を何らかの手段によって新たに捕捉することができれば、捕捉率は44%に高まる。単価は一定として、捕捉しているニーズに対する受注率が62.5%で変わらなければ、売り上げ(受注高)は27.5億円となり、10%の売り上げアップを実現できる。

100億円×捕捉率44%×(捕捉したニーズに対する)受注率62.5%=売上高27.5億円

 このように、捕捉率の改善は売り上げ拡大に直結するのである。購買プロセスのより早い段階から顧客の動向やニーズを把握しておくことの重要性、すなわち捕捉率をKPIとして重視すべき意義が、よく理解いただけるのではないだろうか。

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