日本生命保険(以下、日本生命)は障がい者の雇用が進んだ企業として知られる。本社や支社での雇用はもちろん、大阪市西淀川区御幣島(みてじま)にはニッセイ・ニュークリエーション(NNC)という障がいのある人が中心となって働く子会社がある。NNCの多様な個性を生かす職場づくりを紹介する。
三堀健一
本店人事課長兼 障がい者雇用推進室長
生命保険は、お互いに助け合う相互扶助の精神で成り立っている。日本生命が障がい者雇用に積極的なのは、「その精神が息づいているからです」と話す同社の三堀健一・障がい者雇用推進室長。「障がい者、健常者を分けるのではなく、全従業員が共に働くことを大事にしています」。
同社では障がい者の雇用を推進するため本社や47都道府県の支社に「サポートパートナー」という職種をもうける一方、1993年には保険業界で他社に先駆けて障がい者の雇用に特別の配慮をした特例子会社※のニッセイ・ニュークリエーション(NNC)を設立した。「NNCは、『障がい者が障がい者のための会社をつくる』というコンセプトで運営しており、それぞれが持つ個性や能力を発揮できる職場づくりを目指しています」(三堀室長)。
※親会社に合算して障がい者の実雇用率を算定できる子会社
障がい者自ら動く会社を
象徴する委員会活動
NNCの余部(あまべ)信也社長は、設立当時をこう振り返る。
「当社には設立当初から誰かに言われたからやるというのではなく、主体性を持って障がい者自らが動く会社にしたいという強い思いがありました。同時に、『お互いの障がいを理解し、支えあう』という風土があり、チームワークで働くことを大切にしてきました」
余部信也
代表取締役社長
主体性とチームワーク。それを象徴するのが、社員が自主的に運営する委員会活動だ。
創立時からのメンバーの一人で、車いすを使う相井(あいい)弘幸担当部長が委員会活動の成り立ちを次のように説明する。
「NNCの主な仕事は印刷・製本業務と保険関係の一般事務です。設立当初は印刷・製本を聴覚障がいの15人、一般事務を肢体不自由の10人が担当していました。業務内容が大きく異なることもあり、お互いになじむことができずにいたことから、コミュニケーションを円滑にするために自主的に手話委員会が立ち上がりました。また、マナーを良くしたいという声が上がったことで、ビジネスマナー委員会が生まれました」
今では社会貢献委員会、危機管理委員会、研修委員会、IT委員会、社内報委員会、図書委員会、おもいやり委員会、ガーデニング委員会など25委員会が活動している。
図書委員会の活動では毎月10冊を選定しており、蔵書数は1700冊に達している(右)
NNC設立から27年が経過した今、余部社長は「会社運営の核となる人材を育てること」に力を注いでいる。昨年は精神障がいのある社員から副主任が誕生し、今年は相井担当部長が経営幹部クラスに昇格した。「時間はかかりましたが、ようやく理想の形になってきました」。