現在の不安定な経済環境がいつまで続くかは定かでないが、確かにいえることもある。それは、この期間中の準備が企業の将来を大きく左右するということだ。その大きな柱の一つが「デジタル」だ。競争力強化に向けてデジタルをいかに活用するか――。例えば、コロナ禍で注目を集めたリモートでの業務遂行や「三密回避」についても、実はIoTやAIなどの先端技術を活用して、取り組みを推進することができる。
スマートグラスを用いて
効率化、技能継承を支援
新型コロナウイルスの影響を受けて、ニューノーマルの時代に向けた戦略的な取り組みをスタートさせた企業は少なくない。キーワードはデジタルである。「ライバルが投資を絞ったいまこそチャンス」と、デジタル投資を検討する企業もある。将来に向けて、デジタル化、デジタルトランスフォーメーション(DX)が重要テーマであることに変わりはない。
製品そのものをデジタル化してサービスを拡充、競争力強化につなげる。あるいは、業務プロセスの効率化・自動化を進める。こうした施策を進める上で、最新の技術は大きな助けになる。AIやIoT、5Gなどの技術が急速に進化しており、以前に比べるとはるかに低コストで導入可能な状態になっている。スマートデバイスも同様だ。スマートフォンは当然のことながら、スマートグラスやスマートウォッチなどのデバイス類のコストパフォーマンスも大きく向上している。
スマートグラスとネットワークを介して、ユーザーの手元の映像を共有することができる。教える側と教わる側が非対面でやり取りできるので、Withコロナ環境でも安心だ。工場などの現場では、熟練者による若手の指導にも活用できるだろう
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コロナ禍では、リモート環境でいかに効率的に業務を進めるかが問題となった。その解決策として、スマートグラスを活用する方法がある(図1)。スマートグラスを装着したユーザーは、自分の見ている書類などを遠隔のオペレーターと共有して作業を進めることができる。慣れていないユーザーでも、オペレーターの適切な指示の下で迅速に書類作成などが可能だ。このスマートグラスを使った手法は、社内での業務遂行だけでなく、顧客向けの受付業務、書類作成を伴う手続き業務などでも応用が可能だろう。
スマートグラスの活用は、実は製造業の一部の工場ではすでに導入され、効果が上がっている。ある造船メーカーの工場には、鉄板を複数のボルトで締める工程がある。ボルトの順番は決まっており、レンチを使って一定の強さで締めなければならない。そこで、締めた度合い数値化して通信する機能を搭載したレンチとスマートグラスを導入。スマートグラスにはボルトを締める順番、レンチの締め具合などのガイダンスを表示する。これによって、若手でも熟練者並みの仕事ができるようになった。こうしたIoTの仕組みは効率化や技能継承などに役立っている。