拡張性が非常に高く、オープンなストレージ
――「CORTX」とは、どのようなソリューションですか。
新妻 「オブジェクトストレージ」と呼ばれる、データサイズやデータ数の制限がない保存方法によって、従来のストレージとは比較にならないほど大容量のデータが保存できるソリューションです。
従来のファイルストレージは、一つ一つのデータを階層(ツリー)状にひも付ける構造になっています。階層が増えれば増えるほど構造が複雑になるので、保存できるデータ量にどうしても限度が生じてしまいますが、オブジェクトストレージは、データ群を「オブジェクト」というひと塊ずつの単位として並列保存するので、拡張性が格段に高いのです。容量上の問題で、これまで保存できなかったデータがほぼ無制限に格納できるようになり、効果的なデータ活用が実現します。
――オブジェクトストレージは、AWS(アマゾン ウェブ サービス)やMicrosoft Azure、Google Cloud Platformなどのパブリッククラウドも提供しています。これらのサービスとは何が違うのでしょうか。
新妻 パブリッククラウドと同様のオブジェクトストレージを、プライベートクラウドとして利用できるのが大きな違いです。
データ活用の際に、パブリッククラウドに格納されたデータをいったん呼び出し、分析をして、またパブリッククラウドに戻すとなると、かなりの運用コストがかかります。
その点、自社のストレージであれば、運用コストを大幅に抑制できますし、データが生成される機器や、分析するシステムのすぐ近くに置くことで低遅延稼働を実現できます。今後、ますます普及するエッジコンピューティングや、コアのデータセンターにおけるAI分析に最適化した配置が可能になるのです。
また、「CORTX」には、シーゲイトならではのテクノロジーも数多く採用されています。HDDメーカーとしての強みを生かして、収集したデータが直接HDDに書き込まれる仕組みを取り入れていますし、データバックアップの時間を大幅に短縮するイレージャーコーディングという技術も搭載しています。
さらに、「CORTX」の大きな特徴の一つは、パブリッククラウドが提供するオブジェクトストレージのようなクローズドのサービスではなく、世界中の開発者やユーザー企業に開かれたオープンアーキテクチャーを備えていることです。
すでに、インテルや富士通、トヨタ自動車など50を超える協力者が開発コミュニティーに参加しており、共同開発によって性能や利便性がどんどん高まることを期待しています。
――「CORTX」を支えるハードウエアについても、開発を進めているのでしょうか。
新妻 オブジェクトストレージを安定的に運用させるためには、より大容量で、パフォーマンスの高いHDDが必要です。この2つの課題に対応するため、「HAMR」という熱補助型磁気記録技術と、「MACH 2」というマルチ・アクチュエータ・ディスクドライブ技術の開発を進めており、すでに一部のお客さまの試験を終え、間もなく製品化する予定です。
「HAMR」は、ディスクを大容量化するための革新的な磁気記録技術で、2.6年ごとに容量を倍増できる可能性を切り開くことができました。一方の「MACH 2」は、1枚のディスクを2本のアーム(アクチュエータ)で同時に読み書きする技術で、HDDのパフォーマンスが格段に向上します。
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
新妻 シーゲイトは、大量のデータを無駄なく、効率よく、安全に、しかも高いコストパフォーマンスで利用できる環境の提供を目指しています。使われていないデータをもっと活用することで、ビジネスの成長を実現していただきたいからです。
データ・ストレージ・ソリューション企業として培ってきたテクノロジーを駆使して、これからも企業のデータ活用を積極的に支援していきます。