人手不足や新型コロナウイルス感染防止で、サービスロボットへのニーズが高まる中、課題となるのがロボットの円滑なビル内移動だ。三菱電機ではIoTプラットフォーム「Ville-feuille(ヴィルフィーユ)」を開発、これを活用したロボット移動支援サービスの提供をスタートした。
杉山智昭ビル事業部
スマートビル新事業企画部
サービス事業推進課
三菱電機の「Ville-feuille(ヴィルフィーユ)」は、クラウド上に蓄積したビル設備データの利活用を可能にする、オープンなIoTプラットフォームだ。
「社会環境が大きく変化する中で、これからのビルには、従来の安全・安心、省人・省力、省エネルギーに加え、働きやすさやWellnessなどの新しいニーズへの対応はもちろん、今後新たに生まれてくる未来のニーズにもタイムリーに応えるスマートさが求められます。そうした“スマートビル”を実現するための基盤として開発したのが“Ville-feuille”です。このプラットフォームを活用することで、運用コストの削減やビルの価値向上など、ビルが抱えるさまざまな課題解決に資するサービスを順次提供していくことができます」
三菱電機ビル事業部スマートビル新事業企画部の杉山智昭氏はそう説明する。
エレベーターと連動して
ロボットの移動を支援
同社は今年10月に、Ville-feuilleを活用した新たなビル運用支援サービスを発売。その第1弾が「ロボット移動支援」である。警備、清掃、搬送などの自走式サービスロボットの位置情報を基に、エレベーターや入退室管理システムなどのビル内設備を制御し、ロボットの円滑なビル内移動を支援するサービスだ。
「労働力不足への対応や新型コロナウイルス感染拡大防止を目的に、サービスロボットへのニーズが高まっています。ビル内で自走式サービスロボットを効率よく活用し、その機能を最大限に発揮させるためには、エレベーターとの連携によるロボットの縦移動実現が不可欠でした」
Ville-feuilleが、ロボットのリクエストと位置情報から最適なエレベーターを呼び出し、ロボットに対しては適切な乗降タイミングを指示する。ロボットが細かいエレベーター制御をする必要がないため、ロボットメーカーの設計・開発への負担も少ない。複数台数・用途のロボットを同時に運用することも可能になり、ビル管理のための人手不足を補うとともに、省力化を進めることもできる。
将来的には入退室管理システムとの連携も予定している。ロボットがセキュリティーゲートや自動ドアを通過する際に、入退室管理システムにロボットの通行権限を認証させて、ゲートや扉の解錠や通行のタイミングの指示を行うことで、セキュリティーを確保したシームレスなロボットの横移動が可能になる。
現在、ロボットの通行や接近をアニメーションライティング誘導システムで知らせる仕組みも開発中だ。視認性の高い光のアニメーションを用いたサインを床面に表示してロボットの運行を知らせることで、いきなりロボットが現れることへの心理的衝撃を和らげ、人とロボットの安全な通行を支援する。こうした設備連携が、ロボットと人が共存するスマートビルの実現を推進するのである。