独自開発の「M-マッチングシステム」を運用し、過剰在庫を抱える会社と必要在庫を望む会社をITで結ぶマッチングワールド。匿名性を担保しながら、国内外への販路拡大をサポートしている。2020年度から抗菌作用のあるコーティング剤「ピカプロDX」を販売開始、事業領域を広げている。

 マッチングワールドの事業内容を一言で表現すれば、「過剰な在庫を必要な人に届けるマッチングサービス」となる。創業のきっかけは、町田博社長が“全国のゲームソフト小売店が在庫を抱えて困っている”という話を聞いたことによる。

「ゲームソフトの新作が出て在庫を抱えた場合、地域によって量的な過不足が発生します。ある地域では余剰があっても、別の地域では品不足というケースがある。あるいは売れるピークが過ぎても市場のどこかで需要があるケースもある。もし小売店同士の在庫の売買ができるマッチングシステムがあれば、在庫の中間流通が活発に行われるのではないかと考えたのです」

 2001年の設立以来、取り扱う商品はゲームや玩具、キャラクターグッズ、DVD、CD、雑貨、スマートフォンなど多岐にわたり、運営する「M-マッチングシステム」には、常時35万件以上の在庫が登録されているという。

サービスの大きな特徴は匿名性が
担保されていること

 利用の仕方はシンプルだ。販売したい商品を「M-マッチングシステム」に登録するだけで、買い手・売り手共に自由に閲覧、商品登録、購入ができるようになっている。BtoBの在庫流通プラットフォームであり、登録料や会費などは不要。売り手は自分の売りたい金額を登録すれば、損が少なく在庫処分が可能になり、買い手は必要としている在庫に適正価格で出合うことができる。

過剰在庫と必要在庫をITで結び付けるマッチングサービスを展開マッチングワールド
町田 博
代表取締役社長

 マッチングワールドのサービスの大きな特徴は、匿名性が担保されていることだ。買い手がプラットフォーム上で購入の意思決定をした場合、マッチングワールドがいったん売り手からその在庫を購入するので、どこからの在庫なのか買い手には分からない仕組みになっている。

「売り手は、在庫を処分したという風評が流れるのを極端に嫌います。在庫処分の情報や、“某社が大量に商品を流しているようだ”という情報は、業界内ですぐに知れ渡り、“某社の経営状態は厳しい”という風評に変化します。不良在庫を財政的に正常な範囲で処分しても、そうした憶測を止めることは非常に難しく、時として悪い風評が取引金融機関に回り、資金枯渇の危機を迎えるケースもあります。当社ではそんなことが起きないよう、匿名性を徹底しているため、安心して在庫を処分していただけるのです」(町田社長)

 もう一つの特徴は、商品の検品に力を入れていること。入出荷時に必ずダブルチェックの検品や数量チェックを行うため、商品到着後にクレームが来る可能性は低い。システムはITだが、入出荷時における人手による丁寧な検品が、同社の信頼を構築しているのだ。

 さらにマッチングワールドの強みは、海外への出口を保有していることにある。日本製の商品は、東南アジアをはじめ世界各地でニーズが高く、例えば1世代、2世代前のゲームソフトに対しても高い需要がある。冷え込んでいる日本市場のリスクヘッジを行うためにも、海外への門戸が開かれているのは魅力的だ。海外への配送や決済は同社が行う。実際にメーカー各社も同社を介して積極的に海外へ在庫の販売を行っているという。

過剰在庫と必要在庫をITで結び付けるマッチングサービスを展開左)1階の倉庫では荷物の出し入れ、検品などが行われている
右)国内の在庫はプラットフォームを通じて海外へも積極的に出荷されている

 同社では日本、中国、韓国、香港、台湾出身のメンバーを採用、英語を加えた4カ国語でワールドワイドな営業と運営を行っている。それも強みの一つだ。