新型コロナウイルスの感染拡大によって、企業のオフィス戦略は大きく変わった。テレワークの定着とともに、スペースが余った自前のオフィスを縮小する一方、契約形態がフレキシブルな空間をサテライトオフィスとして活用する動きが広がっているのだ。“ニューノーマル”を生き抜くため、企業が取り組むオフィス新戦略の最前線に迫る。
約4割の大企業がコロナ危機で
サテライトオフィスを設置・拡大
「いずれ、やりたい」から、「いま、やらなければ」へ。新型コロナウイルスの感染拡大によって、企業の“働き方改革”に対する本気度は一気に高まった。
いまや社員の在宅勤務は常態化し、後追いで制度や社員の管理方法やテレワークのためのITインフラなどを整備しようとする動きが顕著になっている。アフターコロナもこの動きが後戻りすることはないとみられており、むしろ、新たな変化にいかに柔軟に対応し、継続的に働き方を変革していけるかが問われることになるだろう。
ザイマックス不動産総合研究所が2020年6月に実施したアンケート調査「コロナ危機における企業の働き方とワークプレイス」によると、アフターコロナのワークプレイスの方向性について、「収束後は以前同様に戻り、あまり変わらない」と考える企業も26.7%いるものの、「メインオフィスとテレワークの両方を使い分ける」(46.5%)や「テレワークを拡充し、メインオフィスを縮小する」(14.3%)、「オフィスを郊外に分散させる」(3%)と答えている。
一定数の企業が多くの社員が在宅などのテレワークにシフトしたことで、余ったオフィススペースをどうするかという問題に直面し、コロナ禍における働き方の変化が“オフィスのあり方”にも影響を及ぼしていることがわかる。
また、新型コロナの感染拡大以降、サテライトオフィスを導入する企業も増えているようだ。 同調査では「自社サテライトオフィス導入のきっかけ」との問いに対し、従業員数100人以上1000人未満の企業では55.2%が「コロナ危機を機に初めて導入」と回答している。
逆に1000人以上の大企業では、「以前から導入していた」との回答が62.8%に達している。すなわち、“働き方改革”の一環であるサテライトオフィスの活用は、中堅・中小企業よりも大企業のほうが進んでいることがわかる。
大企業による活用は、今後ますます広がるだろう。なぜなら、リモートワークの定着によって生じるメインオフィスの余分なスペースは、従業員の多い大企業ほど大きくなるからだ。オフィススペースを縮小し、サテライトオフィスで代替するというオフィス戦略の新トレンドは、事業規模を問わず今後も継続していくものと思われる。
なかには既にメインオフィスそのものを、自社物件や賃貸物件ではなく、サテライトオフィスのような契約形態の空間に設けている大企業もある。