「1to1」に要求される多大なマンパワーをAIに置き換える
では、「1to1」マーケティングを可能とするイノベーティブなマーケティングツールとはどのようなものか。その一つが、セールスフォースが「Marketing Cloud」の新ツールとしてリリースした「Interaction Studio」(インタラクション・スタジオ)である。
前田氏はその特徴について、「ひと言で言えば、『1to1』マーケティングに要求される多大なマンパワーをAIに置き換え、顧客の行動分析からそれに基づく施策の発案までを、全て自動で行うツールです。大幅な省力化、省人化を実現し、多くの日本企業が悩んでいるマーケティング部門の人材不足の解決にも役立ちます」と説明する。
「Interaction Studio」に搭載されたAIは、独自のアルゴリズムに基づく機械学習によって、サイトへの来訪者の性別や年齢といった基本的な属性の他に、どのデバイスからアクセスする傾向が強いのか、どれだけの頻度で訪問し、どの情報を見ているのか、といったパーソナライズされた情報を分析する。しかも、リアルタイムな動きを捉えるので、分析から施策に至るプロセスも人手とは比べものにならないほどスピーディーになる。顧客の購買意欲が冷めないうちに、有効なアクションが打てるのである。
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先行してリリースされた海外では、すでに大企業から中堅・中小企業まで、さまざまな業種が導入し、成果を上げているようだ。
例えば、作業着などを販売する米国のアパレル企業であるカーハートは、「Interaction Studio」を使って、「Understand Me」(私を理解して)、「Help Me」(私を助けて)、「Inform Me」(私に教えて)、「Delight Me」(私を楽しませて)という4つの方向性で、顧客にパーソナライズされた体験を提供する取り組みを行っている。
「Understand Me」では来訪者の性別に合わせた画面表示の自動変更、「Help Me」では購入方法に迷っている人へのサポートメッセージの表示、「Inform Me」では素材やスタイル、フィット感など、来訪者の求めに応じて作業着の詳細な情報を提供する機能、「Delight Me」では来訪者のサイト上での行動を数秒単位で分析し、お薦めの商品を表示する機能などを実現。タイムリーなお薦め商品の表示によって、AOV(平均注文金額)が約40%向上した。
さらに同社は、来訪者の居住地の天候に合わせてサイトの画面表示を変えるという仕掛けも「Interaction Studio」で作り、これによってCVR(コンバージョン率)が約24%もアップした。「1to1」マーケティングの効果が、いかに絶大であるかが分かるだろう。
前田氏は、「パーソナライズやリアルタイムな顧客エンゲージメントを実現するには、大掛かりな仕組みが必要だと思われがちですが、『Interaction Studio』を使えば、小さな取り組みから少しずつ『1to1』マーケティングを実践していくことができます。いずれ日本でも『1to1』がスタンダートになる時代を見据え、今から始めてみてはどうでしょうか」と語った。