高広 日本では、相変わらず「広告」と「マーケティング」の境目が曖昧なケースが多いですが、「広告」ビジネスは規模も領域も変わらない一方、「マーケティング」という視点で見れば、デジタルを中心に大きく広がっているように思います。

 結果として、「広告」の果たす役割が少なくなってきている可能性は否定できません。例えば今は直接消費者とつながることができる時代なので、必ずしも「広告」でリーチする必要はなくなっている。なので、「広告」視点だけでは企業のマーケティング課題の解決にならないこともあるでしょう。

武富 旧来からの、「広告枠を買う」といった手法だけでは、効果の高いブランディングや集客は困難になっていくということですね。

高広 だからこそ、最先端のマーケティング実例やコンセプトに触れることで、マーケティング業界のビジネスパーソン一人ひとりに価値観の転換が起こったほうがよいと思うのです。それが起こると、自分は何をすべきか? 何をここからキャリアを得るのか? を考えやすくなるはず。会社を辞める、海外に行く、などなどの選択肢も増えるでしょう。特に今は、個人が自分のスキルやキャリアを考える時代。会社に頼る時代ではないですしね。

武富 若い人、特に30代前半以下くらいの人には積極的に海外に打って出てほしいと思います。大企業はともかく、スモールビジネスは今や「出て行った者の勝ち」ですから。

高広 日本には本当の意味でのマーケティングを学ぶ専門の大学やキャリアパスのレールがないと言ってもいい。海外に出るなら若い時のほうがいいのは自明で、迷っている人、企業には映画「スターウォーズ」でヨーダがルークに言ったセリフ“You must unlearn what you have learned”(今まで学んできたことを捨ててみよ(思い込みを捨てよ))というフレーズを贈りたいと思います。

 チャレンジの足かせになるのは過去へ固執することから来ると思うので。そして海外で、マーケティング業界のビジネスがどう変化しているのか、その空気を肌で感じていただきたいですね。