――第三者配信やDSP、アトリビューション解析などのテクノロジーが進化していますが、どう生かすべきでしょうか?

平野 ディスプレイ広告は、サイトを訪れた人の目には必ず飛び込みますが、実際にクリックする人は全体の30%足らずだといわれます。私たち広告主が知りたいのは、残りの70%以上の人々がなぜクリックしなかったかということ。それを見えるようにしてくれるのが第三者配信などのテクノロジーなのです。

 限られた予算の中で、いかに高効率、高効果のキャンペーンを展開するかが重要ですが、そのためには、どの時間帯のどのページであればクリック数が増えるのか、ターゲットごとにどのようなクリエイティブ表現をすればいいのか、といったことを詳細に分析しながら、バナー広告のキャッチコピーやデザイン、さらにはキャンペーンの内容を迅速に差し替えていく柔軟さが求められます。それを実現するにはこれらの仕組みが欠かせません。

クリエイティブにも
変化が求められている

中村 平野さんの指摘された変化とともに、広告の実務も大きく変わってきています。マスメディア広告では、一つのクリエイティブ作成に時間をかけたり、広告枠をやりくりすることが実務上重要でしたが、デジタルマーケティングの進化とともに「テクノロジーを利用しながらいかにうまくキャンペーンを運用していくか」という取り組みが求められるようになりました。

 広告主だけでなく、代理店やメディアも、考え方を変えなければならない時代がやって来ていると実感しています。

平野 繰り返しになりますが、デジタルマーケティングのメリットは、われわれの戦略に対する潜在ユーザーからのリアクションが明確に把握できて、より大きな反響や成果を得るためのPDCAサイクルが回せることです。

 そうしたメリットを得るためにも、運用の手間を惜しむべきではありません。

 リアクションを分析しながら広告の打ち出し方をきめ細かく修正していくというのは、今までのやり方と比べると非常に面倒だと思われるかもしれませんが、これこそが本来のコミュニケーションのあり方ではないでしょうか。