成功に不可欠だったSDの意識改革
だが、こうした好循環をつくり上げるためには、SDの意識改革が必要だった。
「彼らは長年、目の前にある荷物を獲得することに専念してきました。また、重量貨物や特殊貨物などは、これまでの経験から”佐川が運ぶ荷物ではない”と判断して、その場で断ってしまうこともありました。そこで、自分たちで”できる、できない”を判断せずにとにかく情報を上げてほしい、GOALが求めているのはお客さまが抱えている”見えない課題”だと繰り返し伝えてきました」(山本執行役員)。それと同時に、SD自らの売り上げに直接つながらない案件であっても、情報をつなぐことが評価につながる仕組みに改めた。
こうした試行錯誤の結果、「SDの中にGOALの存在が徐々に認知され、お客さまとのコミュニケーションの中でつかんだ情報を上げようという”回路”が出来上がってきた」(山本執行役員)と振り返る。
バラエティーに富むソリューション事例
現在、GOALには事業カテゴリー別に九つのチームがあり、それぞれにリーダーがいる。各リーダーは案件内容の専門性に応じて、各事業会社の最適な人材をピックアップしてチームを編成する仕組みだ。カテゴリーは国際物流、リバースロジスティクス(回収物流、静脈物流)、館内物流、コンサルティングなど多岐にわたる。
その中の一つであるTMS(Transportation Management System)では、宅配便以外のさまざまな輸送案件を手掛けている。最近では、急速に普及が進む5G基地局の設置に必要なアンテナやコンクリート柱を設置現場まで輸送する案件を手掛けており、これまでに全国で約1万本を輸送している。同社の全国ネットワークや1日数百台規模の車両を調達できる能力が可能にしたプロジェクトだが、山本執行役員は「宅配便を増やすことだけを考えていた以前であれば、実現できなかったソリューション」とGOALの活動成果を強調する。
また、コロナ禍で海外からマスクや防護服などの輸入が急増した際には、GOALで手掛けた成功事例を汎用サービス化した「スマート・インポート」が成果を発揮した。陸揚げした海上コンテナを、昨年開設した巨大物流施設「Xフロンティア」(東京都江東区)まで運び、そこで宅配便やチャーター便に仕分け、納品先までの迅速な物流を実現。「Xフロンティアには、保税倉庫の他に事業会社の各種機能が結集しており、拠点間輸送や積み替えをすることなくシームレスな一貫輸送を可能にしています」(山本執行役員)と、インフラ増強によるグループシナジーの最大化に自信を見せる。