さらに21年11月には、那覇空港から車で7分という好立地に、データセンター併設の「沖縄セルラーフォレストビル」(那覇市東町)が竣工する。遠い本土ではなく地元にサーバーを置くことでタイムラグの弊害をなくし、5GやIoTを利用した「未来のサービス」を沖縄から発信することを後押しする。このビルには東西ルートのケーブルが確保されており、地元のIT企業が集積する新たな拠点となることが期待されている。
通信技術を使った新規ビジネスを展開
社会貢献にも力を入れる
地元への社会貢献も、沖縄セルラーの大きな特色だ。その一つがアグリ事業の展開。密閉型の室内工場で、通信技術を使って遠隔で温度・湿度・二酸化炭素濃度などをコントロールし、無農薬の野菜(レタス中心)やイチゴを生産する。
「沖縄は毎年台風が来て、新鮮な野菜が不足しがちになります。野菜工場を造れば、天候にかかわらず新鮮な野菜を食べられ、地元での雇用も生み出します。すでにイチゴは県内のケーキ店で有名になり、沖縄の物流ハブ拠点を利用してアジアへ輸出することも予定しています」(湯淺社長)
もう一つが、通信技術を使って健康課題を解決すること。沖縄セルラーでは、「JOTO(じょーとー)ホームドクター」という長寿のためのヘルスケアアプリを開発して各種の測定データを管理。また医療プラットフォーム事業者や県内医療機関と連携して、離島の多い沖縄のオンライン診療の普及に向けたサポート(診察用のタブレット端末を無償提供)を開始している。
さらに子どもの貧困問題を解消するため、「子ども基金」を立ち上げて支援団体へ寄付、進学のため島を離れる学生に携帯電話サービスを3年間無償提供する「離島ケータイ奨学金」などの活動も行っている。いずれも、沖縄の未来を担う子どもたちを支援する試みだ。
「19年度、当社は約140億円の営業利益を得ましたが、税金で40億円、株主配当で40億円、残りの60億円を設備投資に充てるイメージで、地元中心に利益還元を考えています。地元の皆さんのためにも業績を伸ばすのは大切なこと、今後もスピード感のある経営をしていきたい」と湯淺社長。
全国規模の大手にはない視点を持ち、県民向けのサービスに徹した事業展開で躍進する沖縄セルラー。地方における通信キャリアの理想的な姿がここにある。