オペレーターのリモートワークは難しい
コンタクトセンターの業務をリモートワークで行おうとすると、さまざまな問題がある。例えば自宅から顧客に電話で対応しようにも、赤ちゃんの声や救急車の音などの生活音が邪魔になる。またオフィスであれば、電話中に顧客から難易度の高いリクエストが入ってきた場合、リーダーにサポートしてもらうことができるが、自宅では即時の支援を受けることが難しい。他にも、新しくオペレーターになった人たちが現場に定着するまでのトレーニングで苦労していることも分かった。オンライントレーニングに切り替えたが、リアルの集合研修で得られるものとのギャップに悩まされている、という声がある。
これらのオペレーターの悩みは、様々なテクノロジーを日常的に使いこなしていることとも関係している。日本のコンタクトセンターでは、1人のオペレーターの前に複数のディスプレイが置かれている作業環境が珍しくない。受注管理システム、顧客情報データベース、オペレーター同士の社内コラボレーションツールなど、電話を受けながら同時並行で様々なアプリケーションを立ち上げて問い合わせに対応しているからだ。
同調査でオペレーターが普段の業務で使っている作業環境を尋ねた結果を比較したところ、日本は79%、グローバルでは51%が複数のスクリーンを見ながら、顧客の問い合わせに対する情報収集を行っていることが分かった。大竹氏はこの結果を見て「グローバルでのスクリーン数が日本よりも少ない背景として、ツール連携が進んでいる可能性がある」と分析している。つまり、複数のツールの画面を行ったり来たりしなくても、回答に必要な情報へのアクセスがスムーズにできる。そんな作業環境へのテクノロジー投資が進んでいるという解釈である。日本の住宅事情では、リモートワークでオフィスと同じ環境を再現することが難しいという指摘があるが、ディスプレイが複数必要になるということは障壁になりそうだ。
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顧客の接点が多様化する中、デジタル投資は必須になっている
調査からは、デジタル接点の多様化が進んでいることも分かった。2018年と2020年で回答者が業務で使っているチャネルを比較したところ、「オンラインチャット/ライブサポート」「メッセンジャーアプリ」を導入している日本企業が増加傾向にある。LINEやFacebookなどから問い合わせができるようにした企業が増えていることがうかがえる他、「モバイルアプリ」「ビデオサポート」も増えている。
デジタル接点からのサービス提供はこれまでは「あればなお良い」施策だったが、ニューノーマルでは「必須」になった。大竹氏は対面の顧客接点の活用が難しい今だからこそ、デジタル接点への投資が必要と訴えた。
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もう一つ、リモートワークではコンタクトセンターにいるのと同様に、オペレーターが家からでも必要な情報にアクセスできることが問われる。その結果を比較するとグローバルでは77%なのに対して、日本では49%と差がある。この結果について、大竹氏は「VPNやリモートデスクトップなど、外からコンタクトセンターと同等の環境にアクセスすることを想定して以前から環境整備してきたかどうかで違いが出た」と解説する。コンタクトセンターは問い合わせをしてきた顧客の個人情報やこれまでの受注実績など、機密性の高いデータを扱う。オペレーターがリモートワークをするためには、テクノロジーへの投資が必要不可欠と言えそうだ。