音声の不明瞭さや雑音が
コミュニケーションに与える悪影響
先に説明したように遠隔会議を導入した企業の多くが、音声の不明瞭さや雑音によるコミュニケーションの問題に直面している。新型コロナの緊急事態宣言下で2020年度の新入生を迎えることになった中央大学ビジネススクール(大学院戦略経営研究科)もこの課題に頭を抱えた。同校ではインタラクティブな授業(学び)を重視してきたが、オンライン授業ではライブ感に欠け、学びの質や深さで満足できるレベルを実現できないでいた。
2020年7月には、オンライン授業と対面授業を組み合わせたハイブリッド授業の展開を計画し、有志学生の協力を得て実証実験を実施したが、その結果は惨憺(さんたん)たるものだった。教室にあったスピーカーフォンは音性能が低く、リモート側は教室や学生の声が聞き取りにくい。
中央大学ビジネススクールでは、ソーシャルディスタンスを確保するために席の間隔を広げ、併せてマイクの数を増やすなど、あらゆる手立てを試みた。しかし、ハウリングやエコーが発生しやすくなったり、満足いく音声品質にはならなかったり、と教室とリモートが一体となった授業の実現にはほど遠かったという。
そんな時、実証実験に参加していた学生から「当社のオフィスで使っているヤマハ製品では、快適に会議ができている」との意見が出た。早速、デモ機で実証実験を再開するとすべての課題がクリアになり、同校では急遽、臨時予算を組んでスピード導入を図った。
中央大学ビジネススクールが
選んだ遠隔授業の解決策とは
中央大学ビジネススクールのハイブリッド授業を支えるヤマハの技術は次のようなものだ。教卓前には、教室全体を映し出すWebカメラと、ヤマハのスピーカーフォンの上位モデル「YVC-1000」を設置。これに教員用のハンドマイクを接続することで、リモートで参加する学生に教員の声が確実に届くようにした。さらにハンドマイクと、卓上に設置した拡張マイク「YVC-MIC1000EX」4基をYVC-1000に接続して、教室内にいる教授や学生の声をしっかりと集音し、「聞き取りやすい音」としてリモート側に届ける。
YVC-1000には高性能の適応型エコーキャンセラーに加え、マイクで集音した音から人間の声を高い精度で判定する「HVAD(Human Voice Activity Detection)音声処理」、さらにスピーカーには部屋の音響特性に応じてスピーカーからの再生音を最適な音質にする「オートルームEQ」などの機能が組み込まれている。音声とノイズをしっかりと仕分けして「話しやすく」「聞きやすく」「疲れない」音声コミュニケーションを実現しているのだ。
導入後のハイブリッド授業では、教室・リモートの双方でハウリングやエコーがないクリアな音声品質を確保でき、インタラクティブで活発な授業を実現できた。その成功から、中央大学ビジネススクールでは別の教室にもYVC-1000ベースのシステムを導入した。同校研究科長の露木恵美子教授は、「YVC-1000の導入が音声課題を解決する決め手になりました。これからのニューノーマルの時代にはハイブリッド授業がスタンダードになるのは間違いなく、23年に移転予定の駿河台キャンパスでも、音声と映像を高度に融合させた授業を目指したい」と語る。