多くの企業が意外と無防備
サテライトオフィスでの情報漏えい対策
withコロナ時代の会議における課題の中でも、「サテライトオフィスでの情報漏えい」は、意外と経営者の目が行き届かないものだといえるだろう。首都圏を中心に時間貸しのサテライト型シェアオフィス「H¹T」を展開する野村不動産は、緊急事態宣言明けから営業を再開して以来、この課題の解決に悩まされることになった。ニューノーマルでオフィスの分散化を図る企業の動きに連動して、サテライトオフィスの利用者は急速に回復・増加しはじめたのだが、その一方で、「音漏れ問題」が顕在化したのである。
「H¹T」では、1人用の個室から複数利用の会議室、開放型半個室ブースなど多彩なワークスペースを用意している。しかし新型コロナの感染対策として、オープンスペースでの会話や遠隔会議を禁止にしたために、自ずと遠隔会議に使える部屋は限られることになった。さらに半個室ブースの音漏れ(情報漏えい)対策も必要にもなった。
例えば「H¹T立川店」の場合、音漏れの心配がないのは、7つの完全個室と2つの会議室で、全17席のみ。8つある半個室ブースは、上部が開放されているため、音声が外に漏れてしまう。これらを完全個室にするには、各室に空調や防火設備を備える必要がある。しかし、工事のコストや工事中の休業対応などを考えると、完全個室化は非現実的だった。野村不動産は、利用者の増加だけでなく利用形態も明確に予測できるのに各店舗の稼働率には限界が見える、というジレンマを抱えることになったのだ。
半個室のサテライトオフィスでも
安心して遠隔会議ができる理由
検討の結果、野村不動産はパートナー企業からの提案を受け、ヤマハのスピーチプライバーシステム「VSP-2」を導入した。スピーチプライバシーとは、会話から漏れ聞こえてしまうプライバシーや機密情報を守るための技術で、基本的には「吸音」「遮断」「マスキング」の3つがある。VSP-2は、元々部屋にある音に、人の会話音声から合成した独自の情報マスキング音を重ねて周囲に流すことで、「会話している様子は聞こえるが、内容は理解できない環境」を創り出す。
野村不動産都市開発事業本部の藤澤菜穂子氏は、「最初はマスキング音を不思議がられるお客さまもいらっしゃいましたが、安心してWeb会議をご利用いただける情報漏えい対策としてご納得いただいています」と語る。「H¹T立川店」ではVSP-2の導入で、半個室が完全個室に「変身」。つまり完全個室が倍増したのと同じになった。立川店で大きな効果を確認できたことから、野村不動産は直営34店舗にあるすべての半個室ブースにVSP-2を軸としたシステムを導入し、完全個室化を実現した。
このように私たちのコミュニケーションは、実に繊細でデリケートな要素で成り立っている。工夫なくしては、コミュニケーションがリスキーな状態にさらされてしまうだろう。ヤマハはそんな今後の「ハイブリッド型ワークスタイル」をいかにサポートするのか。その展望を、池松事業部長は次のように語る。
「今後のハイブリッド型ワークスタイルで豊かなコミュニケーションを保つためには、画像技術と音の協創も重要なテーマになると考えています。ヤマハでも音の技術を活かしながら、バーチャル・リアリティー(VR)技術の積極的な取り込みも図っていく予定です」
楽器や音響の専門メーカーとして「音」の重要性を深く知るヤマハだからこそ、今後も新しいコミュニケーションを補助する製品が生み出されることだろう。