人手不足が続く中小企業にとって、経理、総務などのバックオフィス業務の効率化は大きな課題。しかし、多くの企業で行われているエクセルベースの業務管理が、それを妨げている側面がある。知らぬ間に蔓延している「エクセル依存」を解決し、業務管理を効率的に進めるにはどうすればよいのか。

検索性、情報共有など
実は問題が多いエクセル管理

 現在、日本の中小企業で最も使われている業務ソフトの一つに「エクセル(Microsoft Excel)」がある。社員ごとの担当案件や、製品・サービスや顧客ごとの受発注・販売実績といった売上管理にエクセルを使っている企業は多い。さらには、顧客ごとの訪問実績や進捗状況などの営業管理に活用しているところもあるだろう。

 エクセルは確かに便利なツールだが、基本は表計算ソフトである。過度にエクセルに依存し過ぎると、知らぬ間に組織内に非効率がはびこる原因となる。特に、十数人程度ならば問題なく回っていた業務が、規模の拡大で社員数や拠点数が増えると、その非効率性が一気に増大する。

 例えば、検索性の問題。顧客名やサービス名などをエクセルに手入力する場合、同じ名称でも入力者によって全角と半角の使い方が違っていたり、「・」の有無が不統一だったりする。同じことでも「電話」「架電」「TEL」というように、担当者によって表記が揺れる場合もある。そのために、検索するときにヌケ・モレが起こりやすい。

 このような課題は、データの正確性に影響を与える。経営判断のために過去実績を分析しようとしても、元データの信頼性が低ければ分析の土台が崩れる。信頼性を高めるために二度、三度とチェックする方法もあるが、そのためだけに手間をかけるようでは本末転倒だ。

 情報共有の観点でもエクセルには課題がある。ファイル共有は可能だが、最新バージョンが分からなくなるという昔からの問題に加え、せっかくセルに入力した関数を別のユーザーがうっかり数値に変更してしまうミスも起きがちだ。誰かが更新しているときには別のユーザーは更新作業ができず、項目が増えるとファイルが重くなり、作業にも時間がかかる。

 部門間で管理したい項目、必要な情報の粒度などが異なるケースもエクセルは不得意だ。例えば、営業部門がA・B・Cの項目を管理、経理部門がB・C・Dの項目を管理しているとしよう。B・Cは共通管理項目だが、各部門がそれぞれエクセルで入力するので、二重入力の手間がかかるだけでなく、人的ミスが入り込む可能性もある。

 このようなさまざまな課題を、多くの企業は人手や残業によってカバーしている。また、経営判断の質の低下によって、せっかくのビジネスチャンスを見落としている場合もあるだろう。エクセルだけでなく、古いパッケージソフトを使っている企業でも類似の課題があるはずだ。