2000の専門辞書と
進化し続けるサービス
同社の翻訳サービスの基盤となっているのは細分化された専門辞書と翻訳例だ。その専門分野の数は現在2000を超える。業種業務に特化した辞書があることで、最初から一定レベル以上の翻訳が可能になり、その後の処理もスピードアップできる。
「人手と同じ完成度の翻訳を半分のコストで実現でき、情報を伝えるだけの翻訳なら50分の1のコストで済みます。翻訳の速度も自動翻訳は圧倒的ですが、そのスピードをお客さまの競争優位につなげていただくまでのプロセスを理解し、サービスに反映させることが重要です」と古谷統括部長は語る。
T-4OOの“OO”には“御社オンリー”という意味が込められており、企業ごとに異なる独自の社内表現や言い回しを学習させることができる。さらにカスタマイズを強化した新サービス「T-3MT」では、翻訳例をそっくりまねて翻訳するエンジンをユーザーが自分で生成できるという。翻訳結果を自分の好みにカスタマイズできれば、成果物に仕上げるまでの労力も大幅に削減できるだろう。
高いセキュリティーレベルも、企業での実用性を高めるために同社がこだわっているポイントだ。稼働するサーバーもセールスもサポートも全て自前でそろえ、大手金融機関や法律事務所などセキュリティーに厳しい顧客からの信頼も厚い。
「ユーザー企業にとって翻訳は目的ではなく手段です。多様なニーズに応じるために顧客との接点を増やし、機能やラインアップを充実させてきました」と渡邊事業部長は語る。自動翻訳をただ提供するのではなく、自動翻訳が必要となるシチュエーションにまで踏み込む発想が同社の特長だ。顧客ごとに異なる用途やニーズに応じて、主力のT-4OOをはじめ、翻訳工程全体の効率化にこだわった「Rozetta MEMSOURCE」、音声を認識して翻訳する会議音声翻訳ツール「オンヤク」など、多彩なサービスを展開している(図2)。今春予定の「オンヤク」のアプリケーション連携では、同時翻訳された字幕を介して外国人とストレスなくウェブ会議ができるようになる。
自動翻訳に限らずツールによる効果は使い手次第の側面もあるが、同社では導入後のサポート体制も重視する。T-4OOの導入企業では、億単位の生産性向上を実現した例など大きな成果が報告されている。また「日本語という独特の言語の壁に苦労する外資系企業からの期待も大きい」と、サービス提供は国内にとどまらない。
同社が目指しているのはAI自動翻訳という技術を通して、言語の壁を取り除くことだ。渡邊事業部長は「日本企業を言語の呪縛から解放したい」と抱負を語る。世界市場における日本企業の言語的ハンディキャップを解消するために、同社のさらなる飛躍に期待したい。