戦略的提携をより迅速に実現することが可能に
――基盤事業のジェネリック医薬品は医療にとって必要不可欠な存在となっていますが、今後どのように強化していくのでしょうか。
澤井 「研究開発力」と「安定供給力」のさらなる強化を図っていきます。
研究開発では、国の定める基準よりも厳しい自社基準に適合したものだけを世界中から厳選する「原薬選び」や、新薬と同じ有効成分・同等の効き目を担保し、飲みやすさや処方・調剤のしやすさを高めるために改良する「製剤工夫」に取り組んでいます。
具体的な事例として、水なしでも飲める口腔内崩壊錠(OD錠)にする、苦味をマスキングする、カプセルから錠剤に変えるなどは、服用する患者さんに飲みやすさを実感してもらいやすい製剤工夫です。
直近では、オリジナルのプレミックス添加剤、オリジナルの核粒子技術(※)などを生かした製品も出てきました。製剤工夫として研究開発本部が取り組んでいる内容が実を結んだ実例です。
(※)
オリジナルのプレミックス添加剤:錠剤、特にOD錠を製造するに当たり、錠剤としての高い硬度、速崩壊性、耐湿性など相反する特性を兼ね備えさせるために開発した特定の添加剤の組み合わせ。
オリジナルの核粒子技術:原薬(有効成分)の苦味を抑えるためのコーティングをする際、コーティング剤を少量で均一に被覆することができ、効率的に原薬の苦味を抑制できる技術。従来よりもコーティング顆粒を小さくできるため、錠剤サイズも小型化できるとともに服用感の向上にも効果を発揮した。
(右)開封してすぐ目に入る部分に「類似名あり」と表示することで、取り違えに対する注意を喚起する
また、製剤だけではなく、「包装も含めて品質」と考え、取り違え防止対策として品名表示やデザインの工夫、取り出しやすいようにパッケージの工夫などを積極的に行っているのも当社の特徴です。例えば、骨粗しょう症の治療薬で、手の力が弱い患者さんでも楽に取り出せるように、台紙を折り曲げて錠剤を取り出せるようにしました。当社が開発したこのパッケージは、日本包装技術協会主催の「2018年日本パッケージングコンテスト」でアクセシブルデザイン包装賞を受賞しています。
患者さんがジェネリック医薬品にアクセスしやすくなるために、まだジェネリックとして発売されていない成分を新製品として、いち早く世の中に出すことも当社の社会的役割です。従って、特許が切れた後、最も早い承認時期に承認を取得し、発売していくことにもこだわっています。
20年は、複数の品目において当社単独での発売を実現しました。また、新製品の一つである骨粗しょう症治療薬は高いシェアを獲得しており、20年の売上をけん引し、コロナ禍による落ち込みをカバーしています。
製品を発売するためには有効成分自体の特許はもちろんのこと、製品を製造するための製造方法や添加剤の組み合わせ等に関する特許も回避する必要があり、それを実現する技術力と知財判断力が当社の強みです。有効成分の特許が期限を迎える6~7年前から開発に取り組み、年度にもよりますが数十品目の新製品を発売しています。
持株会社体制への移行は、M&Aを含む戦略的提携をよりフレキシブルかつ迅速に実現することが可能になる他、ジェネリック医薬品以外の事業の経験を積み上げることによって周辺事業での相乗効果も期待できます。
新規事業として始めたALS(筋萎縮性側索硬化症)治療薬の新薬開発に対する社員の関心は高く、知見やノウハウを吸収したいという強い意欲を見せています。
――品目数が増え、数量が増えると、「安定供給」や昨今の製薬企業に対して向けられている「品質管理」が課題になります。
澤井 当社では、全国6工場で、業界トップクラスの年間155億錠の生産体制を確立しています。当社が取り扱う製品ラインアップは、現在約780品目と非常に多く、多品種少量生産が求められますが、生産本部と営業本部との連携によって綿密な生産計画を立てて安定供給に努めています。
現在の年間販売数量は約124億錠なので、まだ余力はありますが、設備のリニューアルや市場の動向に応じた拡張が今後の課題になるでしょう。
医薬品を製造する工場は、法令で定められた基準に基づき、製造管理と品質管理を行っています。当社では、工場が法令に基づいた基準に適合した製造管理と品質管理の下で製造を行っていることを、当社の品質保証部門が現地等で確認しています。さらに、より良い品質のジェネリック医薬品を世に送り出すために、 国が定めているものよりも厳しいサワイスペックの基準を設けています。