2050年ネットゼロカーボン社会の実現に向けて五つの事業を推進

上流事業における
CO2低減と水素事業

2050年ネットゼロカーボン社会の実現に向けて五つの事業を推進

──具体的に、どのような事業を推進していくのでしょうか。

上田 まず、CCUS技術による上流事業のCO2低減があります。CCUSとは、Carbon dioxide Capture, Utilization and Storageの略。石油や天然ガスの上流事業で発生するCO2を回収し、地下に圧入、圧入した力を利用して油ガス田に残った原油や天然ガスを押し出しながら、同時にCO2を地中に貯留する技術です。つまりCCUSは、CO2の削減を実現しながら、石油や天然ガスの増産につながるのです。現在、当社の頸城(くびき)油田(新潟県)においてCCUSの実証を進めており、技術を確立した後は、国内や豪イクシスLNGプロジェクトなど海外の当社操業アセットでの活用を目指しています。

 二つ目は水素事業の展開です。これは中長期的な水素社会の到来を展望し、水素製造・供給事業の展開を図るもの。当社が生産した天然ガスを水素とCO2に分離して、その水素を発電所や水素ステーションに供給、CO2はCCUSなどで再利用するカーボンフリーの「ブルー水素」製造事業です。

 現在、当社の南長岡ガス田(新潟県)にて生産された天然ガスを利用して柏崎市で水素製造と水素発電を行い、CO2を柏崎ガス田のCCUSに活用して地下に残存する石油や天然ガスを回収する上流から発電・水素利用まで一気通貫のカーボンフリー水素ビジネスの実証事業を計画中です。

 水素事業に関してはもう一つ、水素の海外から国内への輸送手段として、アンモニア事業や液化水素事業も検討しています。アンモニアは石炭火力発電で混焼することでCO2削減効果が得られるため、クリーン燃料として注目されており、アブダビでクリーンアンモニアの製造を行えないか、検討しています。輸入したアンモニアを日本の電力会社に供給することで、国内のCO2排出削減への貢献も期待されます。

──三つ目の「再生可能エネルギー」に関しては、どのように取り組みを強化していきますか。

2050年ネットゼロカーボン社会の実現に向けて五つの事業を推進再生可能エネルギーの取り組みを強化。「地熱」では、世界最大規模のインドネシア・サルーラプロジェクトに参画

上田 まず、地熱発電は地下の資源を利用することから、石油・天然ガスの上流事業と非常に親和性が高い事業と考えており、当社が持つ技術や経験を応用することが可能です。当社は15年に世界最大規模のインドネシア・サルーラプロジェクトに参画し、すでに商業運転を開始しています。国内でも小安(秋田県)や阿女鱒(あめます)(北海道)などで噴気試験を実施、商業化への取り組みを加速しています。風力発電に関しても石油・天然ガス開発で培った洋上浮体施設の建設・操業の経験を生かして、浮体式洋上風力発電の事業化を目指しています。

 四つ目の新分野事業では、カーボンリサイクルを推進するメタネーション事業の実証と人工光合成の研究があります。前者はCO2と水素を反応させて都市ガスの主成分であるメタンを生成する技術で、今後は当社の越路原プラント(新潟県)で実証中のメタネーションプラントのスケールアップを検証していきます。後者は昨年12月に豪の北部準州ダーウィンに太陽光を利用した水素生成試験設備を設置し、有効性の検証を開始しています。

2050年ネットゼロカーボン社会の実現に向けて五つの事業を推進新分野でも、人工光合成の研究開発を推進、豪ダーウィンに人工光合成パネルを設置

 五つ目は森林保全を支援することによるCO2吸収事業の推進です。これら五つの新事業分野に、年間投資額の約1割に当たる200億~300億円/年程度の投資を展望しています。そのためにも、基盤事業である上流事業での収益確保が重要になります。

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