ジャガー・ランドローバーが全モデルEV化でモビリティ変革に挑む理由

2025年からジャガーブランドをフルEV化

北川 2050年に向けて世界の自動車メーカーがさまざまな取り組みを行う中で、ジャガー・ランドローバーは「Reimagine」という新戦略を掲げました。戦略の意図と中身について教えていただけますか。

ジャガー・ランドローバーが全モデルEV化でモビリティ変革に挑む理由スマートドライブ代表取締役 (CEO)北川 烈
慶應義塾大学在籍時から国内ベンチャーでインターンを経験し、複数の新規事業立ち上げを経験。その後、1年間米国に留学しエンジニアリングを学んだ後、東京大学大学院に進学し移動体のデータ分析を研究。その中で自動車のデータ活用、EV、自動運転技術が今後の移動を大きく変えていくことに感銘を受け、在学中にSmartDriveを創業し代表取締役に就任。

マグナス ジャガー・ランドローバーはここ数年、「ディスティネーション・ゼロ」という戦略を展開してきました。ゼロ・エミッションに加え、交通渋滞ゼロ、事故ゼロを実現しようという取り組みです。

 モビリティにおける大きな問題の一つは交通渋滞ですが、自動運転技術やコネクテッド技術、道路に設置するセンサーなどのインフラが整備されることによって、この問題は解消されるものと考えています。交通渋滞によるCO2排出量の増加が地球環境に悪影響を及ぼすことを考えれば、その解決は非常に重要です。

「ディスティネーション・ゼロ」で掲げたさまざまな課題解決への取り組みを再構築したのが、「Reimagine」です。従来はゼロ・エミッションが中心でしたが、「Reimagine」ではサステナビリティをテーマの主軸に据えています。

 例えば、どのような素材を使ってクルマを造るのか。綿や皮革ではなく、ペットボトルを原料とするリサイクル繊維素材を使ってシートを加工するといったように、単なるゼロ・エミッションだけでなく、サステナビリティ全体の観点から考えることに取り組んでいきます。

 そして、2025年からジャガーの全モデルをEVに転換します。ジャガーブランドを、将来のモビリティ変革の中核を担う存在へと変えていかなければなりません。EVだけでなく、FCV(燃料電池車)への転換も加速させます。

 ランドローバーについては、EVに加えて、PHEV(プラグインハイブリッド車)やFCVなども展開します。EVは2024年以降に投入する予定です。

 次世代のクルマは、未来の環境に適応するものでなければなりません。変化に適応しながら、ジャガー・ランドローバーの新たな価値や魅力を創り出していきたいと思っています。

ジャガー・ランドローバーが全モデルEV化でモビリティ変革に挑む理由ジャガー・ランドローバー・ジャパン 代表取締役社長 マグナス・ハンソン
1974年生まれ、スウェーデン出身。ヨーテボリ大学経済商法学部、同大インターナショナルビジネス修士課程卒業後、スウェーデンのサーブに入社。13年間で、財務、アフターセールス、プロダクト開発、セールスおよびマーケティングという多岐にわたる業務を経験。その後インフィニティに移り、香港本社でグローバルセールスのゼネラルマネージャーを担当。2年間務めた後ジャガー・ランドローバーに移籍し現職。

北川 スマートドライブはモビリティデータを活用したサービスを企業に提供するB to Bビジネスに携わっていますが、お客さまとの対話の中でEVシフトの需要が急速に高まっていることを実感します。

 われわれが提供する走行データや充電スポットの数、充電の状況などのデータを複合的に組み合わせることで、会社のクルマをどのくらいEVに転換できるのかといったご相談をかなり頂いています。

 環境への配慮を考えると、今後はクルマがどう動いているのかというデータだけでなく、動かしているエネルギーはどこから来たものなのかとか、それをどこで充電すべきなのかといった、より広いデータを集めることが大切なのではないかと感じています。

マグナス おっしゃる通りです。企業にとって、従来は商用車の運用に関わる燃料コストや修理、保守・点検などのデータだけが重要だったのではないかと思います。これらのデータの収集・分析はさほど難しくなく、さまざまなサービスも提供されています。

 一方で、今後EVシフトが進むと、「車両ごとの充電能力はどれだけあるのか」「どのくらいの頻度で充電するのか」「使用する電力はクリーンに作られているのか」などといったデータの収集・分析も求められるようになります。

 従来のデータ収集・分析よりも複雑さが増し、さまざまなパートナーの協力を仰ぐ必要性が生じていると思います。

北川 B to B領域はもちろんですが、ジャガー・ランドローバーが向き合っているB to C領域では、なおさら「お客さまの環境意識」が高まっているのではないでしょうか。

 例えば、EVで余った電気を災害時などに家庭で使うといった家庭とモビリティを同時に考えるV2H(Vehicle to Home)といった動きも起きています。結果、家庭で再生可能エネルギーによる発電を行えば、ガソリン代も光熱費も要らなくなるといったように、生活が変わり、「街としての最適化」が実現するのではないかということは、データ分析の側面からも感じています。

マグナス その通りだと思います。個人のお客さまの場合も、企業と同じように「どれだけエネルギーコストを抑えるか」ということは重要ですが、一方で個人のお客さまは、ロジックだけではなく、志や感情に訴え掛ける要素も求めておられます。

 例えば、個人が「地球環境を大切にしたい」と考えるのは感情的な側面です。先進国の多くの人たちは、地球環境を守るために自分自身が「責任ある行動を取ろう」と考え、持続可能な選択を行っています。

 これからは、そうした方々に求められるクルマ造りがより大切だと思っています。

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