HbA1c値改善のための具体的方策
日本生活習慣病予防協会では、生活習慣病予防の実践法として「一無、二少、三多」の健康習慣を提唱している。
「一無」とは無煙・禁煙の勧め、「二少」とは少食・少酒の勧めである。食事は腹八分目を目安にし、お酒を飲む場合は1日に日本酒で1合、ビールなら500ml、グラスワインなら2杯程度にとどめておくことを奨励。「三多」とは多動、多休、多接の勧めであり、多動は活発に身体を動かすこと、多休は心身のリフレッシュを図ること、多接とは多くの人、事、物に接して創造的な生活を送ることが大切であるという提唱だ。
HbA1c値を改善する食事の基本
CPHO(最高公衆衛生責任者)
事業開発マネジャー
佐々木 由樹氏
リンクアンドコミュニケーションの最高公衆衛生責任者であり、管理栄養士である佐々木由樹氏は、食事と運動の両面からHbA1c値を改善する具体的な方法を示してくれた。
同社の調査によると、「コロナ禍でどのようなメニューが増えたか」という問いに、1位が炊き込みご飯、2位が焼きそば、3位がピザ、4位がチャーハンというように、1品で済ませられる「複合的な主食」が増加したことが分かったという。「おうちご飯」が増え、1日3食をバランスよく品数も豊富な食事を作るのは難しく、つい1品で済むメニューが増えたということだろう。
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こうした状況の中でHbA1c値を改善するための食事療法は、以下の通りだ。
①ダイエットは食事量の減少でなく、カロリー調整を。
まず肥満の人は痩せることが大切で、目安は体重の5~7%、80kgなら75kg程度を目指すのが良い。このとき、ダイエットは食事の量(g)ではなくカロリー(kcal)を減らすこと。量を減らしておなかが空くのを我慢するダイエットは続かない。一般的に男性は700g、女性は600gで満腹感を得られるという。この量は変えずに、カロリーの高い総菜をカロリーの低い総菜に替えることで、無理なく続けられるだろう。
②1日1食分を未精製穀類に替える。
未精製穀類とは、玄米やそば、全粒粉パスタやライ麦パン、シリアルなど。未精製穀類の摂取量が1日に90g増えると、糖尿病リスクが26%減るという。
③朝・昼・晩の3食の中に野菜のメニューが4~5皿あるのが理想。
野菜の摂取量が1日300gで、糖尿病リスクが9%減るという。
④果物を1日1~2回(200g)摂取する。
果物を食べることで糖尿病リスクが10%減るという(ただし1日400gを超えると効果は減少するので注意)。そのまま食べてもいいが、ヨーグルトと一緒に食べるとタンパク質や乳酸菌も取れて一石二鳥だ。果物の糖分が気になる人は、糖質の低いかんきつ類やベリー類を取るといい(バナナ、マンゴー、ブドウ、柿などは糖質が高い)。
⑤食事の際は、ゆっくり食べる、よくかむ、野菜を先に食べる。
血糖値が上がり過ぎないような食べ方をする。
HbA1c値を改善する運動ノウハウ
コロナ禍では運動量の減少も明らかになっている。厚生労働省がまとめる「健康日本21(第二次)」では、成人男性で1日に9000歩、成人女性で8500歩歩くことを推奨しているが、同社の調査によると、2020年4~5月の緊急事態宣言中は6割強の人が6000歩未満になっていた。
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不要不急の外出自粛の中で運動するのはなかなか難しいが、無理のない範囲で次の二つのことを実践してみてほしい。
①少し息が弾む程度の運動を、1日20分(週2.5時間)行う。
毎日行うのが理想だが、まずは無理のない範囲で、週3回を目標に始めてみるといい。
②2時間座り続けたら、10分体を動かす。
例えばジムなどでしっかり運動している人でも、座りっ放しの時間が長いと糖尿病や血糖負債の発症リスクは軽減されないことが分かっている。座りっ放しがリスクを高めることを覚えておこう。
とはいえ、テレワークといえども決して暇ではない。佐々木氏は、忙しいビジネスパースンに一番気を付けてほしいこととして、「睡眠時間の確保」を挙げる。睡眠時間を削ってまで運動したり、食事を取っても、体に負担をかけるだけだからだ。
自身のHbA1c値を意識して、以上のような食事や運動の工夫を取り入れれば、「血糖負債」は改善し、数年後の健康な生活につながっていく。さらには健康寿命を延ばすのも夢ではない。コロナ後を見据えて、ぜひ健康な心身を手に入れてほしい。
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