農業用ビニールハウスで国内シェアトップクラスの渡辺パイプは、7月14日にオンラインの「農業用ハウス見積もりシステム『らくちん』」をリリースした。日本全国さまざまな環境下で、ビニールハウスで栽培される作物は多岐にわたる。そうしたさまざまに異なるニーズに合わせたビニールハウスの価格がすぐに分かるものだ。背景には、農作物の安定供給を重視する国と、そのために生産性を上げつつ計画的に農作物を管理生産するビニールハウスへの生産者の期待の高さがある。

農家の収益を向上させ、社会の食のニーズを支えるグリーンハウス

 夏野菜といわれるナスやトマト、キュウリなどは、一年じゅうスーパーに並んでいる。他にもさまざまな野菜が、いつでも新鮮な状態で、手に入れやすい値段で店頭に並んでいることが、現代日本の食生活においては当たり前になっている。

 旬以外にも流通している野菜の多くが、ビニールハウスなどでのハウス栽培物だ。そもそも日本でビニールハウスが本格的に普及し始めたのは、1950年代。この頃は、畝に何本もの竹などを渡してその上をビニールで覆った、トンネル状のビニールカバーのようなものだった。その後、文字通りハウスという建屋の形へと大型化していくが、基本機能は、温度や湿度を調整して最適な栽培環境を整え、自然気候に左右されずに農作物を安定供給できる基盤を整えることにあった。こうしたビニールハウスは、今では農業用施設「グリーンハウス」と呼ばれ、そのグリーンハウスを利用した農業の形態を施設園芸という。

 農林水産省は「野菜のように供給量の増減が価格変動に大きく影響する作物は、施設園芸(ビニールハウスなどを利用した作物栽培)により供給の安定化を図ることが重要」(2021年「施設園芸をめぐる情勢」)としている。

 同時に、施設園芸は、生産者にとって収益向上のための手段でもある。

渡辺パイプ グリーン事業部
服巻 拓 農場長

 現在、グリーンハウスで国内シェアトップクラスの渡辺パイプが有する実証農場(農家と同じ環境を再現した実験農場)「げんき農場羽生」の服巻(はらまき)拓農場長は、「自然環境下では収穫できない時期に、グリーンハウスで栽培した農作物を出荷できれば、高単価で販売することができるのです」と語る。旬の時期に、屋外で栽培された露地作物が大量に出回れば、当然のことながら、価格も下がる。そこで、時期をずらすことで作物の単価を上げて、収益増を狙うことができるのが、グリーンハウスなのである。

 さらなるグリーンハウスの普及を狙う渡辺パイプでは、オンライン見積もりシステム「農業用ハウス見積もりシステム『らくちん』」を稼働させた。

 グリーンハウスを導入したいと思っていても、検討段階でわざわざメーカーの担当者を呼んで見積もりを取るのは、心苦しく手間だと考える生産者も多いだろう。そこで、グリーンハウスを設置する土地の広さや形状などの基本情報を入力し、軒高、間口、棟数など希望するグリーンハウスの形式、地域の気候に合わせた耐雪などの機能条件を指定すれば、条件に合うお薦めハウスが標準坪単価とともに提示される。その情報を基に事前に十分に検討した上で営業担当者に連絡を取れば、貴重な時間を効率よく使えるわけだ。

 グリーンハウスは、本来その土地の自然の環境下では育成できない作物の栽培を可能とすることで、農業の可能性を大きく広げた。近年では、グリーンハウスにおいても技術開発やIT化が進み、農業経験が少なくても、高品質・高単価な作物の栽培が可能となってきている。作業の負担を減らし、高度な環境制御が可能になり、これまで3K(きつい、汚い、危険<あるいは稼げない>)といわれた農業とは、全く異なる姿を見せてくれる。