自然災害による離農を防ぎたい

 水道などの管材や住宅設備機器を扱う渡辺パイプが、グリーンハウス事業に参入したのは、64年のこと。同社創業者の渡辺次祐が竹の強度の弱さに苦労する農業の窮状を救うため、竹や角材の支柱を自社で扱うパイプに替えた堅牢なグリーンハウスを提供した。67年には、さらに栽培環境を整えるために温熱資材、灌水装置を装備した大型ハウスを開発した。

 そして現在、グリーンハウスのリーディングカンパニーとなった同社は、業界に先駆けてさまざまな機能やサービスを開発・提供している。

 まず、農業には、自然環境、また自然災害が大きく影響する。台風などで、グリーンハウスが倒壊することも少なくない。同社では、06年に屋根の骨組みをクロスさせて強度を上げた「トラスハウス」をリリースした。

「トラスハウスは、屋根の骨組みが特許取得の複数の三角形(トラス構造)から成っていて、一般的な平行構造の1.5倍の強度を持っています。部材使用量を大幅削減することができることから、圧倒的なコストダウンも実現しました」と服巻農場長は語る。

 さらに14年には、新開発の八角形断面のパイプを使用した「八角ハウス」を発売。パイプ単体として「タフパイプ」と呼ばれる通常のパイプより強度を高くしたパイプを採用し、さらにパイプ同士の接点が面となることで固着力が大幅にアップして構造面の強化を図り、最高3.5メートルの高軒高を実現した。

トラスハウス
八角ハウス

 こうした強いグリーンハウスのための独自構造開発に先立ち、03年から同社が設計・施工したグリーンハウスに「3年補償サービス」を付帯している。風雪害、落雷、水害など11項目の損害を被った場合、自己負担なしで付帯設備まで含めて修理、復旧するものだ。20年末までに、日本全国に設置された「3年補償ハウス」は累計2万8500棟を数える。

「3年補償サービス」も高強度の構造開発も、「多発する自然災害によって離農されてしまう生産者が多い中、どうにか離農を防ぎ、日本の食料自給率向上に貢献したいという思い」を形にしたものだ。グリーンハウス事業に参入以来、創業者の農業を通した社会貢献への思いは変わらず、今も引き継がれている。