価格と使いやすさにこだわる、導入しやすいシステム

 他にも同社のグリーンハウスには、コストパフォーマンスに優れた定番の「UKシリーズ」、より風を受け流しやすい形状で低価格の「Uシリーズ」、広い間口に大きな屋根がかぶさる、開放感のある「Vシリーズ」、グリーンハウス内で高所作業台車が使える柱高が高い「Wシリーズ」など、用途や予算に合わせて選べるさまざまなグリーンハウスがある。

「現在のグリーンハウスは、温度や湿度だけでなく、CO2や光といった環境を高度に制御するスマート農業に対応しています」と服巻農場長は語る。

 16年6月、同社は高機能グリーンハウス制御盤「ウルトラエースシリーズ」を発表した。ハウス内に設置されたセンサーで、温度・湿度・CO2データを収集して“見える化”するモニタリング機能を標準搭載。それらのデータを基に「換気装置」や「カーテン装置」、作物に水をやる「灌水装置」などのハウス設備を自動で制御するのだ。

 さらに、モニタリングサービス「ウルトラネット」へログインすれば、スマートフォンやパソコンから、いつでもどこからでも各種機器の操作ができ、効率的な栽培管理が行える。また、クラウドサーバーに蓄積した環境データを活用することで、初心者でも確実な栽培ができ、作業の負担を軽減し、省力化を実現しながら、高品質・高単価な作物の管理栽培を可能としたのである。

「当社は64年のグリーンハウス発売以来、農業の課題を解決するための努力を続けています。国は今、スマート農業の推進に力を入れていますが、それに不可欠なモニタリング装置を使いこなしている生産者は多くありません。栽培データを活用して収量を増やしている生産者はもっと少ない。そこで当社では導入しやすい低価格と、使いやすさにこだわって、ウルトラエースシリーズを開発しました」

(左)制御盤 (中央)CO2発生装置 (右)灌水装置

 従来のグリーンハウスの設備コントロールは、それぞれの設備のメーカーが制御機器も販売しており、機器の数だけ制御盤とセンサーが必要であった。センサーもメーカーが違えば少しずつ誤差が生じ、狙った通りのコントロールができないといった問題点もあった。そうした課題をハウスメーカーとして解決したのが環境制御装置の「ウルトラエース」だ。

 1台で複数の機器を一括制御が可能で、インターネットに接続することで、ハウス内の環境を遠隔地でもモニタリングできるようになっている。ハウスメーカーとして部品からフィルム、機器までを製造し、設計から施工までワンストップで行える強みがある同社のグリーン事業部は、自社で農場を経営しながら、農家の収益向上や将来にわたる事業継続のための製品やサービスを開発して、日本の農業を支えているのである。

 全国のグリーンハウスの設置面積4万2164ヘクタールのうち、加温装置を備えたグリーンハウスは41.2%に相当する1万7388ヘクタール。しかし生産者の負担を軽減する温度や湿度、光などの複数の環境を制御する装置を備えたグリーンハウスはわずか2.7%の1134ヘクタールにすぎない(前出「施設園芸をめぐる情勢」)。スマート農業への道のりはまだ遠い。ただ、同社の農業に懸ける思いと、グリーンハウスとウルトラエースといった施設や設備が、スマート農業の普及と農業の課題解決に貢献するはずだ。

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渡辺パイプ株式会社 グリーン事業部
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