煙のない社会を目指して事業を根底から変革
村尾 素晴らしい企業姿勢だと思いますが、気になるのは、その想いや取り組みが消費者にしっかりと伝わるかどうかということです。情報発信の仲介役となるメディアが、伝えたいことを歪めてしまう恐れもあります。対メディア戦略はどのように行っていますか。
教授
村尾信尚氏
井上 新型コロナウイルスの感染拡大を巡って、信ぴょう性の疑わしい情報がインターネット上を飛び交ったように、誰もが情報発信できるようになった今日においては、信頼できる情報をいかに確実に伝えるかということが重要になっています。
ですから、フィリップ モリスは、会社にとって都合のいい情報ではなく、科学的な根拠や客観的な事実に基づいた中立的な情報を提供するように心がけています。IQOSの蒸気に含まれる有害および有害性成分は紙巻たばこの煙に比べて約95%低減されているという情報も、科学的エビデンスに基づいたものです。
村尾 社会的要請への対応と、企業としての利益追求は、得てして矛盾するものです。非喫煙者が増えれば、当然ながら、たばこ会社の収益に多大な負のインパクトが及ぶわけですが、その矛盾はどうやって解決していくのでしょうか。
井上 フィリップ モリスは現在も紙巻たばこを製造していますが、いずれ完全にやめる方針です。つまり、170年以上にわたって継続してきた事業や収益モデルを根底から変革しようとしているのです。事業変革に当たって、われわれが目指しているのは紙巻たばこの煙のない社会の実現です。
エグゼクティブ・アドバイザー
井上 哲氏
日本の喫煙率は年々低下していますが、それでも約2000万人の喫煙者がいて、本人の健康を害するだけでなく、受動喫煙の問題は、依然深刻な状況が続いています。
ですから、本来ならすべての人がたばこをやめて私たちも売らないのが望ましいものの、どうしてもやめられない、やめたくないという人のために、煙の出ないたばこという選択肢を用意して、切替えを促しているのです。
このように、社会的課題に対するソリューションを用意し、新しい価値を提供していくことが、フィリップ モリスのこれからの事業です。
松下幸之助氏やピーター・ドラッカー氏が「企業は社会の公器である」と述べたように、事業そのものが社会課題の解決につながるような収益モデルを目指していきたいと考えています。