三菱総合研究所は、革新的な技術による社会変革である「3X(スリーエックス)」と新たなコミュニティの「共領域」によって、50年後には豊かさと持続可能性が両立した社会が実現できると主張している。3XはDX(デジタル)、BX(バイオ)、CX(コミュニケーション)から成る。この連載では、3Xのコンセプトによるさまざまな変革事例について紹介していく。
第1回は、環境や健康など、社会と個人双方にとって重要な課題に対し、「地域通貨」という意外なツールで解決を試みる「Region Ring™」を紹介する。ブロックチェーンを活用したデジタルプラットフォームが、人々の自発的な行動を促し、経済的価値と社会的価値を同時に創出する。
ブロックチェーン技術が可能にした
複数課題の同時解決
「出発点は、地域の課題解決に向けて、一人一人のアクションを創り出そうということにありました」。三菱総合研究所イノベーション・サービス開発本部 地域DX事業部の早川玲理氏は、「Region Ring™」の開発のきっかけをこのように語る。
Region Ring™は地域通貨の発行・利用を管理する仕組みで、利用すればするほど、経済的・社会的価値が生み出され、それを地域の課題解決につなげていこうというもの。地域住民の健康増進や地域・観光活性化、
「
「まずは、プレミアム付きのお得な地域通貨で消費喚起をしたり、地域にとっての善い行いに対するポイントというような経済的インセンティブを与えたりですとか、そういう形で人々の行動変容を促していこうというところに取り組んできました」
2018年10月から12月にかけて近鉄グループホールディングスが発行主体となって行われた「近鉄ハルカスコイン」、20年1月から2月にかけて、大手町、丸の内、有楽町地区を対象に、東京都が独自に発行したSDGsポイント「東京ユアコイン(オフィス型)」など、具体的な実証実験を重ねながら、その効果を検証してきた。
特に後者では、時差出勤や在宅勤務を定着させるため、早朝の出勤やカフェ利用などに対してポイントを付与した。また、プラスチックごみの削減を進めるため、地区内のコンビニやドラッグストアでのノーレジ袋での購入や、カフェでのマイタンブラー利用などに対してポイントを付与するなど、今後ますます必要とされる社会行動への参加や、新しいライフスタイルに基づく行動を、経済的インセンティブによって誘発させるという実験だった。