東京都心部での実証実験では
SDGsへの関心が明らかに高まった
地域社会に貢献することの意義は、多くの人々に理解されているものの、一歩進んで行動に移せるかというと、そのきっかけをつくることはなかなか難しい。例えば、SDGsは企業レベルでは経営戦略に組み込まれるなど、徐々にビジネスパーソンの関心も高まっているが、一方で、個人のレベルで意識されているかというと、有り体に言ってそれほどでもないだろう。
その点で、地域通貨や地域ポイントによって経済的なインセンティブを使いながら、ショッピングなどの身近な日常の中で、そのまま社会課題の解決に直結する行動を促すことができるのであれば、無理なく行動変容につながっていくという期待が持てる。
先に挙げた「東京ユアコイン(オフィス型)」のケースでは、利用者の中でSDGsに対する関心が「とてもある・ややある」と答えた人が実証実験の前後で計55.3%から91.5%へと36.2ポイントも増加している(n=6416)。始まりは、「お得そうだから」という意識かもしれないが、それをきっかけに「初めの一歩」を踏み出すことにつながっており、確かにそこには、個の意識が高まり、アクションへとつながる萌芽が感じられる。
現在、三菱総研では、大手町、丸の内、有楽町地区全体のSDGsを促進するイベント「大丸有SDGs ACT5」(主催:大丸有SDGs ACT5実行委員会)において、「Region Ring™」を活用したSDGsポイントアプリ「ACT5メンバーポイントアプリ」を導入している(2021年5月10日〜11月末予定)。
大丸有地区で取り組むことが可能なSDGsテーマとして、「サステナブルフード」「気候変動と資源循環」「WELL-BEING」「ダイバーシティ&インクルージョン」「コミュニケーション」の5つを設定し、該当する活動に対してポイントを付与している。さらに、同アプリ上では参加者自身の活動状況に応じて初級や達人といった5つのランクが認定されたり、常時最新の参加者数や参加者全体の活動量が分かる「見える化」の機能、企業単位で参加できる仕掛けなどを装備している。
こうしたポイント機能に加えて、ナッジ的なアプローチも組み合わせることで、個人のアクション増大や、個人と地域の関係性が高まるような取り組みを通じ、コミュニティが形成されるような効果も期待されている。
- ・イベント:主な対象者:大丸有地区のオフィスワーカーおよび来街者
- ・ポイントの発行主体:大丸有SDGs ACT5実行委員会
- ・期間:2021年5月10日~2021年11月30日予定
- ・参加方法:スマートフォンアプリ「ACT5メンバーポイントアプリ」をダウンロードして登録
- ・ポイントアプリ紹介サイト:https://mb.act-5.jp/
「現在、Region Ring™にはさまざまな企業や自治体から多くの関心を寄せていただいています。特に、単にデジタル化するという発想にとどまらず、地域内で循環するところに可能性を感じていただいていると思います。例えば、お店で使われた地域通貨が仕入れや従業員の給料支払いなどに使われるようになれば、地域の中で循環する通貨になることが期待できます。地域通貨と一緒にためられるポイントは、多くの人が参加するインセンティブにもなり、個々のアクションが大きくなっていくことにもつながるかもしれません。当社としても、Region Ring™を通じて、地域経済や持続性を高めていくソリューションを提供していきたいと考えています」(早川氏)
「Region Ring™」は、単に経済的なインセンティブを与えるツールではない。地域内の個人や店舗・企業などをつなぎ、経済を回すツールになると同時に、多様な価値観に基づき自分が所属するコミュニティを形成し、アクションを起こすことを通じて、自分自身も、そして地域自体も育っていくことができるようなプラットフォームにもなるであろう。DXを背景としたデジタル地域通貨サービスがCXとなり、量的な成長から質的な成熟へと、人のつながりを通じて豊かさの概念を転換していくための起爆剤の一つになるのかもしれない。
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