地球規模で求められるモノを持つのが
グローバル企業
「実際にバングラデシュを訪れると、米などの炭水化物は山ほどあるのに栄養失調にあえぐ人たちが多くいた。人が健康に生きるための野菜やタンパク質などの栄養素が決定的に不足していたのです。現地に行って初めて本質的な問題が分かったし、行かなければベンチャー企業を立ち上げることもなかった。海外に行くことが世界を救うことの第一歩になったのです」
各務学長の専門はグローバル経営論。「私の考えるグローバル企業とは、単にグローバルに展開することではなく、地球規模で求められる独自のモノを持つこと。ユーグレナは、人間に必要な栄養素のほぼ全てを含む食用としてのミドリムシの屋外大量培養に世界で初めて成功した企業で、唯一無二の製品を持っている。それこそが、グローバル社会で生き残る条件だと思います」。
出雲社長は、バイオテクノロジーこそが日本にとって可能性のある分野だと言う。
「物理や数学には唯一の科学的真理があり、それを普遍化していくのは欧米の十八番(おはこ)。一方で東洋思想と機能的なバイオテクノロジーは、すごく相性がいい。途中で諦めずに、忍耐強くコツコツ頑張れば、世界で勝ち残れるモノを生み出せる。私たちがまさにそうでした」
今、ユーグレナは数々の機能性食品を生み出し、バイオ燃料の研究も進め、まさに世界の栄養やエネルギー問題を解決しようとしている。
各務学長がさらに主張するのは、多様な価値観を認め合うことがグローバルであるということ。駒澤大学は7学部9大学院研究科がワンキャンパスにあり1万4000人を超える学生が学んでいる。授業では他学部と共同のゼミを行うなど学際化が進み、意図して多様化を進めている。
「育った背景や価値観が違う人間が集まれば、当然葛藤が生まれます。大学はごちゃ混ぜの環境で、他人と“もめる場所”であっていいと考えています。相手の立場に立って考え、多様性に対応していく力を付けることは、グローバル人材に不可欠な要件です。性別や年代や国籍が違えば、自分の考えを言語化する努力も生まれます。それがグローバルの本質だと思っています」