コロナ禍によって、多くの企業がサプライチェーンの寸断という大きな問題に直面した。そこであらためて浮き彫りになったのが、サプライチェーンDXという経営課題だ。この課題解決に向け、日本企業はどう取り組むべきか。世界最大規模の企業間取引プラットフォームを運営するオープンテキスト(本社カナダ)の2人に聞いた。
サプライチェーンの混乱で
多くの企業がリスクに直面
オープンテキスト ソリューションコンサルティング本部 マネージャー 深井麻紀子
オープンテキスト インダストリー営業本部 本部長 菅原勇人
販売・調達・物流・財務といったサプライチェーン業務において、世界中のメーカー・小売業者やサプライヤー、物流ベンダーがオープンテキストの企業間取引プラットフォームに接続し、年間900兆円以上の商取引を行っている。各取引データの交換や蓄積、分析、システム運用・保守をマネージドサービスとして提供し、コンサルティングサービスも行う同社には、サプライチェーンマネジメント(SCM)のベストプラクティスが刻々と集約されている。
そのため、「コロナ禍をきっかけにサプライチェーンのDXを真剣に検討する日本企業から当社への相談が急速に増えています」と、オープンテキストの菅原勇人氏は語る。
コロナ禍によるサプライチェーンの混乱で経営リスクに直面した企業は多い。取引先から部品供給が止まり、生産が停止する企業も続出した。どの部品が、いつ供給再開できるのか、電話やメールでの確認には多大な手間と時間を要する。一方で、「サプライチェーン全体をデジタル化、可視化できている企業は、スマートフォン一つで部品ごとの生産・在庫・出荷・配送などの状況を簡単に把握し、すぐにアクションを起こせます」と同社の深井麻紀子氏は指摘する。
また、多くの日本企業は海外先進企業に比べて製品の利益率が低いという構造的な問題を抱える。ノートPCを例に挙げると、日米の大手メーカーでは、粗利益率に倍以上の開きがあるといわれる。「米国の大手PCメーカーは、サプライチェーンデータを徹底活用しています。たとえば、サプライヤーごとの納期遵守率などを分析し、前年比でパフォーマンスが落ちたら値下げを要求するといった活用法です。これだけで原価率が大きく変わります」(菅原氏)
デジタル機器など製品寿命が短い商材は、売れ行きが落ちたら値引きし、それでも在庫が余れば償却処分するしかない。サプライチェーンをデジタル化できていれば、需要動向に応じて生産や在庫を柔軟に調整し、値引きや償却を最小限に抑えることができる。「その効果は、物流費削減の比ではありません」(菅原氏)