サプライチェーンレジリエンス獲得へ
「100%デジタル化」が第一歩となる

独シーメンスは1年半で
「100%デジタル化」達成

 先進企業はデジタル化によるビジネスのROI向上に向け、第3世代のサプライチェーン基盤構築へと進み始めた(図表)。深井氏は、「エンド・トゥ・エンドの『100%デジタル化』が、第3世代サプライチェーン基盤構築の最初のマイルストーンになります」と語る。その実例としてドイツのシーメンスを挙げた。

 シーメンスのサプライヤーは調達分野だけでも10万社以上に及ぶ。以前は全取引先の20%しかEDI(電子データ交換)化されておらず、残り80%の取引先とは電話やメール、ファックスなどでデータをやり取りしていた。そこで同社は、オープンテキストの企業間取引プラットフォーム「Trading Grid」を導入することを決定。わずか1年半で全サプライヤーとの取引を100%デジタル化した。これだけの短期間でプロジェクトを完遂できたのは、API(注1)によるリアルタイム連携からWeb-EDIまで、Trading Gridが取引先の規模に応じてさまざまな連携手段を装備していること、また、各地域や国ごとの仕様、法規制など固有の要件にも対応していることなどが理由として挙げられる。

「シーメンスでは、ある部品の納入が遅れそうな場合に生産ラインをどう組み替えるかといったスマートファクトリーの強みを活かした対策を、プロアクティブに打つことができるようになりました」(菅原氏)

 日本のある大手化学メーカーもDXプロジェクトの第一歩として、100%デジタル化に着手した。この企業では、基幹系システムをクラウド型ERP(統合基幹業務システム)に移行する計画だが、ERPの移行プロジェクトでは、複雑かつブラックボックス化したサブシステムの存在が失敗の原因となることが少なくない。そこで、基幹系システムを刷新する前に外部との取引データをTrading Gridで統合管理することを決めた。Trading Gridにはデータ分析のためのBI(注2)やアラート機能などが実装されており、独自のサブシステムの利用を大幅に減らせる。

 また、この化学メーカーは自動車、電機など複数の業種に部品・素材を供給するため、業界ごとの標準仕様に対応したデータ連携が必要だが、Trading Gridは異種のデータ変換を自動的に行う機能も備えている。

 昨今では、ESGの観点から取引先を含めた環境問題、労働・人権問題などへの対応も重要な経営課題となっているが、Trading Gridは約7万5000社を評価した世界最大のサステナビリティ評価データベース(注3)にもアクセスできる。

 先進企業ではいま、不測の事態に柔軟に対応できるサプライチェーンレジリエンス(回復力)が大きなテーマになっている。「デジタル化後進国といわれる日本ですが、挽回は十分可能です。国内外のサプライチェーンに精通した当社では、お客様の現状分析からあるべき姿の実現までトータルにご支援できます」と菅原氏は力強く語った。

注1)アプリケーション・プログラミング・インターフェース。
注2)ビジネスインテリジェンス。
注3)エコバディス(本社フランス)が「環境」「労働と人権」「倫理」「持続可能な調達」の4分野において企業の方針、施策、実績を評価したもの。

問い合わせ先
オープンテキスト株式会社
〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-8-3 丸の内トラストタワー本館18階
https://www.opentext.jp
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