日本でも続々と生まれる
フードテック企業
今年6月8日に閣議決定されたばかりの「環境白書」でも、代替肉への転換の重要性が取り上げられた。農林水産省の官民協議会でもタンパク質をはじめ、30年先まで見据えた食料供給のサステナビリティを確保するための方策について、さまざまな議論がなされている。
「代替肉のポイントは、タンパク質が不足しがちで、
「身体的な制約があったとしても、選択肢が狭まらず、豊かな食を享受できるという点で、地球の持続可能性だけでなく人にとってもメリットがあります」
現状では、この分野で日本は世界に後れを取っている。マーケットとしても、動物愛護・サステナビリティ意識が高く、かつ健康志向が高まっており、ベジタリアン・ビーガン率の高い欧米がリードしていることは確かだろう。
ただ、「食×テクノロジー」で事業展開を図る「フードテック企業」は、日本にも続々と生まれている。
例えば、代替肉開発メーカーのネクストミーツは大豆やエンドウなどの植物性タンパク質を組み合わせ、熱と圧力で代替肉を成形することにより、独自の食感と味わいを表現し、無添加で生産する。21年4月には大手製薬会社、食品用生産設備設計会社、海外向け物流ソリューションなど、シナジーが見込める複数の企業の出資により10億円の資金調達を完了。参画企業との連携により、代替肉「ネクストミーツ」の研究体制を強化し、製品のクオリティー向上、生産効率やサプライチェーンの質の向上を図り、世界的プラットフォーマーを目指すという。
写真:中尾由里子/アフロ
培養肉を手掛ける再生医療ベンチャーのティシューバイネットもユニークだ。細胞を結合させる独自技術「ネットモールド」技術を使い、牛肉や鶏肉を作製する。複数種の細胞を1つの塊に組織化することもできるため、塊にする細胞の組み合わせによって食感や味を変えることができる。例えば淡泊な味にしたい場合は脂肪分が少ない細胞を結合させるなどといった制御が可能という。
一方で、この技術を再生医療にも活用するというから興味深い。
このような先端的な取り組みに加え、日本としての強みを打ち出せる領域もある。例えば、日本で生まれた概念「うま味」を生かした食味の改善、発酵に関わる繊細な環境制御の技術を生かした素材の開発、多様な商品を展開する大豆の加工技術などの領域は競争力がありそうだ。