サステナブルフードは
新たなマーケットを形成するか
現状では、店頭に並ぶサステナブルフードは少数であり、日本にいる限り周囲にビーガンも少ない。その必要性についても、さほどでもないという感覚が一般的かもしれない。
ただ、マーケットサイドの購買行動の判断基準となる価値観は、現状からは変わっていくと考えた方がいい。現に若い世代では、サステナビリティを意識した新しい価値観が定着しつつあり、その動きはサステナブルフードという新たなマーケットを主導する可能性がある。
例えば1990年代半ば以降に生まれたZ世代以降の世代にとって、サステナビリティは身近で当たり前の価値観になりつつある。
「その世代の意見を聞いていると、本質的なサステナビリティを追求している企業から商品・サービスを選びたいというニーズの高まりを感じます」(山本氏)
全てとは言わないが、マクドナルドが海外でプラント・ベースド・ミートを出している、というような企業の具体的な取り組みに関心を抱く層が一定数いる。その一方で、企業がマーケットの反応だけを気にした表層的な取り組みに否定的な反応を示すケースもある。
「SNSネイティブ世代では、そういう情報があっという間に拡散します。環境問題も、教科書や新聞、テレビで見る、“地球のどこかで起きている大変な問題”ではなく、“タイムラインに写真や動画がリアルタイムで表示される”ものであり“周りの友人も一緒に見聞きしている”もの。つまり、自分事に近いということです」(山本氏)
サステナビリティを含む社会課題に対する若年層の感度の高さや柔軟性、行動力は、今後のビジネスにおいては十分に考慮しなければならないだろう。
ユーザーサイドから見れば、過度に禁欲的になる必要はない。畜産農家が環境に配慮をしながら手塩にかけて生産するおいしい畜産物もたくさんあり、そういう選択肢も同時に選べるようになる姿が「豊か」な食生活。サステナブルフードは「代替」というより、選択肢を広げていくもの、食の豊かさや楽しみを守り・広げていくものと考えるべきなのかもしれない。
そのような中で、いかにサステナブルな選択肢を取ってもらうか。そこではDXを活用した仕掛けが不可欠だろう。
まずは、どの商品がどれくらいサステナブルなのかを評価し、見える化することが必要だ。それができれば日本で育てた鶏肉と、遠くの国で作られたプラント・ベース・ミートのどちらが本当は環境負荷が小さいか、という議論も、当たり前のものになっていく。
さらには、その評価に応じて、消費者にインセンティブを与えることによって、行動変容を促すことが可能になるだろう。
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