プロセス主導型の変革
ノンコア業務集約のさらにその先へ
まず、プロセス主導型の変革。最初のステップとなるのが、差別化領域(コア業務)と非差別化領域(ノンコア業務)を見極め、切り分けることだ。その上で、ノンコア業務の効率化と品質向上を追求する。
「日本企業の多くがシェアードサービス会社にノンコア業務を集約するなど、効率化を進めてきました。ただ、機能集約の段階にとどまっているケースが多く、十分な効果が生まれていないように見えます。もう一歩踏み込み、統一された管理ガバナンスや継続的な改善などを仕組みとして埋め込むことで、一層の効率化と業務品質向上が見込めます。さらに、業務のデジタル化を徹底することで、より大きな効果を期待できるでしょう。ワールドクラス企業の多くは、この段階に進んでいます」(田中社長)
ノンコア業務については、必ずしもグループ内に残す必要はない。実際、ワールドクラス企業の多くは、これを外部化している。逆に、コア業務については社内で差別化・高度化を追求する必要がある。
「主に外部の専門集団が担う支援業務はCoS(Center of Scale)、社内で行う付加価値業務はCoE(Center of Excellence)と分類することができます。CoSは人とデジタルを組み合わせて、効率と品質を追求する。一方のCoEはより高度な業務、例えば業務の集約化や自動化、標準化などについて設計から実現までを担当。CoEが設計した新しいプロセスはCoSに渡されて、CoSが日常業務として行います」と田中社長は語る。
CoEが既存プロセスの課題を抽出し、新しいプロセスを設計する上で欠かせないのが、CoSが業務を通じて収集したデータである。CoEはそのデータを分析し、AIなども駆使することで大きな効果を創出できる(図)。
CoS業務を通じて蓄積したデータを用いて、CoEが分析を実施。CoEは新プロセスをデザインし、主にBPO側に置かれたCoSがその運用に当たる。CoEは高付加価値業務、業務の高度化にフォーカスし、CoSは支援業務を担当して効率化と高品質化を追求するという役割分担である
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ある消費財メーカーA社は、リベート(販売パートナーに対する販促費)の過払いに課題を感じていた。そこで、基幹システムに入力されたデータと契約書の内容を突合して、不一致のものをリストアップ。契約書の内容を構造化データに変換する際には、AI-OCRなども活用している。A社は年間約2500億円のリベートを支払っていたが、この施策によって25億円を削減することができたという。
「私たちは幾つかの段階を踏んでCoS業務の効率化を進めることで、ほとんどのケースにおいて、5年後の業務コストを50%以下まで削減しています。コスト削減分の中身は、主として人件費。そこで気になるのが雇用ですが、教育やリスキリングなどを通じて雇用を維持する仕組みも用意しています」と田中社長。同社が日本企業からも選ばれる理由の一つは、雇用に配慮した仕組みにもあるようだ。