データドリブン型の変革を
壁を乗り越えて実現する
次に、データドリブン型の変革について。ワールドクラス企業がデータドリブン型オペレーションを実践している一方で、多くの日本企業はその重要性を認識しつつも、幾つかの壁に阻まれている。例えば、システムが統合されておらずデータが分散している。データの分析や活用を担う人材の不足なども課題だろう。ただ、技術によって克服できる壁もある。
「データの分散は重要な課題ですが、最近は異なるシステムを統合する技術も進化しています。業務プロセスと既存システム間のギャップを軽減し、手作業を減らすことも可能です。こうした技術を活用することで、システムやデータの壁を乗り越えることができるようになりました」
そう語る田中社長が、事例として挙げるのが電機メーカーB社である。B社ではデータ活用が思うように進んでいなかった。需要予測の精度や在庫量の大きさ、意思決定が遅いことも課題だった。
需要予測の精度を高め、サプライチェーンの柔軟かつ効率的な運営を目指す。そのためにB社はSCM部門だけでなく、営業やマーケティング、商品部など関係部門のメンバーを巻き込み、ジェンパクトと共にプロジェクトチームを結成。これも、部門の壁をなくすための仕組みだ。他にも、さまざまなところで仕組み化を意識していると田中社長は語る。
「従来は月次だった意思決定を、日次へと高速化しました。チャネルパートナーから日次データを受け取り、それを分析・活用できる仕組みを構築。閾値を設定してアラートを通知できるようにし、閾値内の場合は自動処理するようにしています。また、状況把握と意思決定をサポートする仕組みも用意。自動化に過度に頼るのではなく、人の判断を生かせるようにしています」
B社のプロジェクトは大きな成果を上げた。需要予測精度は45%から75%に上昇し、在庫量は30%削減されたという。
もう一つは、消費財メーカーC社の事例である。テーマは運転資本の改善だった。
「このプロジェクトにはC社の経理部門メンバーと、ジェンパクトのデータ分析および経理のエキスパートが参画しました。経理業務をデータ分析によって深掘りし、短サイクルで多くの調査を実施。結果として売掛金を450億円削減し、買掛金は120億円削減、95億円の在庫を削減しました」と田中社長。トータルでは750億円以上の運転資本改善を実現できたという。
このプロジェクトは業務の効率化だけでなく、品質向上にも大きく寄与した。情報の正確性が高まり、標準化も進んだことで、より正確な情報把握が可能になった。また、勘と経験に依存した業務から、科学的根拠に基づく業務への転換も進みつつある。さらに、手作業による煩雑な分析が多く行われていた経理部門では、基礎的な分析の自動化が進んだ。結果として、経理部門のメンバーは企画・計画策定などのより戦略的な業務にシフトすることができたという。
以上、3社の事例を交えてワールドクラス企業のオペレーション変革を見てきた。同じことは、日本企業にも十分可能だ。
「変革を実行するための条件は、日本企業にもそろっています。経営者は腹をくくって、変革に向けた仕組みづくりにチャレンジしていただきたいと思います」と田中社長。経営者の決断が問われている。
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