「この地では03年以降、大規模なエビの養殖が始まり、地下水の大量取水や養殖での汚染水問題など、人為的な影響も問題になっています。適応策の検討に際しては、地形や生態系という自然環境だけでなく、住民が地域の自然資源をどのように利用、依存しているのかを踏まえる必要があります。それぞれの地域における人と自然との関わりが重要なのです」(平井教授)
国内では、茨城県の霞ヶ浦における“人と湖とのつながりの再生”への取り組みがある。かつては自然豊かな湖岸のある霞ヶ浦だったが、70年代以降、「霞ヶ浦開発事業」などによって地形改変が進み、自然の砂浜や植生に縁取られた水際がほとんど失われ、人と湖とのつながりがなくなってしまった。平井教授は現在、湖岸の自然再生への取り組みに参加、ゼミの学生たちもフィールドワークを兼ねて、湖岸のヨシ群落地の再生などに協力している。
平井ゼミでは毎年全国の湖沼を対象に“巡検(野外調査)”を実施、現場を訪ねて五感で“感じる”ことを大切にしている。「地理学の基本にあるのは、Think Globally,Act Locallyに加えて、地域を俯瞰するStudy Regionally。さまざまな環境問題に対して的確な対応が求められている現代社会において、地理学の視点や技術はとても有益なのです」と語る。卒業生は、防災や環境関連のコンサルタントや地域の公務員など、幅広い分野で活躍している。
持続可能な社会を
維持するための
マーケティングアプローチ
経営学部市場戦略学科の青木茂樹教授の研究テーマは、サステナブルな社会への生産・流通・消費システム。持続可能な社会を実現するサステナブル・マーケティングを研究している。
サステナブル・ブランド国際会議のアカデミックプロデューサーも務める青木教授は、「地球環境や社会問題などのサステナビリティへの関心が高まり、それが企業のイノベーションやマーケティングに生かされ始めています。SDGsの認知度の高まりに伴い、消費者からの企業へのサステナビリティの評価も高まっている。今後は、企業が環境や社会の問題に対してどのようなスタンスに立つのかという“パーパス”を社会に発信していくこと、企業の大義や存在意義を公言することが、ますます重要になります」と語る。
サステナブル・マーケティングとは、社会課題に対するパーパスを掲げた企業が、持続的な企業目標達成と社会課題解決を両立させながら、持続可能な社会を維持するために行うマーケティングアプローチであり、そのパーパスを契機に企業ブランドを構築していくことをサステナブル・ブランディングという。それが企業における考え方の大きな柱となる。