光触媒という日本発祥の技術を応用して、空気・水・食の安全をデザインする製品に取り組むカルテック。装置自体はコンパクトだが、そこには世界に先駆けた独自技術が搭載されている。ウイルスへの有効性も確認され、今、地球環境の課題を解決するブランドとして注目されている。
2018年4月に創業したカルテックのコア技術は、「独自の光触媒技術」である。では光触媒とは何だろうか。
簡単に言えば、光を吸収して化学反応を促進する物質のことだ。その代表的な材料としては、酸化チタン(TiO2)がよく知られている。
その酸化チタンは、光を吸収することで、強い酸化還元反応を起こす。具体的には、酸化チタンに光を当てると、そこに接触した有機物質が水とCO2に分解される。例えば、空気中に漂う有害物質や悪臭成分、細菌やウイルスはみな有機物質なので、光触媒に触れると、その全てが分解されてしまうのだ。故に、環境につながるさまざまな局面で利用できる。ちなみに酸化チタンそのものは触媒なので、化学反応を起こしても変化はしない。
染井潤一 代表取締役社長
「MY AIR」を装着した染井潤一社長。背後に見えるのは壁掛けタイプの「ターンド・ケイ」。ものづくりの力で地球環境の課題を解決したいという思いが、製品作りに反映されている
カルテックの光触媒技術が持つ
三つの特長
この光触媒は、1960年代に日本で発見された技術である。ただし当時は、光触媒自体の性能が劣っていたため、実用化へ向けた研究はなかなか進まなかった。
「私が光触媒と初めて出合ったのは、約40年前、中学卒業後に進学した高専の化学のゼミでした。それ以来、この技術に魅了され、いつかこの技術で世の中を変えることができないかと、ずっと模索していたのです」
そう語るのは、創業者である染井潤一社長である。
染井社長は、総合電機メーカーでデバイス開発に従事していたが、折に触れて光触媒を利用した製品の開発に挑戦していた。12年頃に、光触媒の材料の分野でイノベーションが起こり、画期的に性能がよくなったため、本格的に開発に取り組んだ。それを自分の望むかたちで世に出すため、独立してベンチャー企業を創業したのだ。
カルテックの光触媒技術には、三つの特長がある。
一つ目は、優れた材料の開発だ。素材である酸化チタンに独自の工夫を施すことで、材料自体の性能を上げている。二つ目は、表面積を増大させる担持技術。これは一言で言えば、液体状にした光触媒をセラミックで作ったフィルターなどに塗る技術のこと。塗る技術によっても、性能は左右される。そして三つめ目は、光触媒の化学反応を高める要素技術(商品開発力)だ。