「交流」の本質を知るサービス業だからできた、オンラインコミュニケーションの変革(DX)

 続いてクラウド人事労務ソフトを使った給与明細を配布するなど、クラウドサービスの導入も進めた結果、デジタルが自分の仕事の助けになることを知ってからは“食わず嫌い”がなくなった。デジタル化成功の肝は「やり抜く覚悟」と「100点を目指さないこと」だ。組織は「2対6対2」に分かれるという法則をデジタル化に置き換えると、前の2割は積極的に使う派、中の6割はどちらでもない派、後の2割は使いたくない派に分かれる。「日本人はイノベーションを好まないので、何もしなければ中の6割は後ろの2割に行ってしまいます。中の6割を前に動かすような施策を講じるとともに、後ろの2割に対しては別のカリキュラムを用意しなければなりません」(薮嵜取締役経営管理部長)。

 さらに、従業員のモチベーションが上がるような人事評価のデジタル化にも挑んだ。

「サービス業の人事評価の難しさは、『おもてなし』が無形だというところです。ブライダルの例では、どんなに素晴らしい演出をしても、おいしい料理をお出ししても、これらの付加価値はお客さまの記憶に残るだけなので、KPIを設定して数字で評価することが難しい。しかし、このまま諦めてしまっては、当社の未来はないと思いました」(薮嵜取締役経営管理部長)。そこで、BIツール(Business Intelligence Tools):データを分析・見える化して経営や業務に役立てるソフト)を導入して、『お客さまが喜んだ』というざっくりした評価ではなく、『お客さまが何にどのくらい喜んだ』というように評価項目を細かく設定しようと改良を重ねているところだ。

顧客獲得に向けた「攻めのDX」を実行

 ここまでの社内向けDXは、生産性向上やコスト削減などを主眼とした、いわば「守りのDX」。会社が成長を続けるためには、ブライダル市場が縮小する中でも収益を確保し、さらに増やす「攻めのDX」が不可欠だ。

 手始めに取り組んだ主な施策は、(1)見込み客へのアプローチをデジタル技術で効率化するMA(マーケティングオートメーション)を使ったDMの発送と、(2)オンライン・イベントの開催、道半ばだがSFA(Sales Force Automation:営業支援システム)を活用した営業活動の活性化にも取り組んで一定の成果を挙げた。

 だが、薮嵜取締役経営管理部長は、KSF(Key Success Factor:重要成功要因)が欠けていると感じていた。顧客へのアプローチや営業活動に関するツールは存在したが、ブライダル業のようなサービス業の根本にある「交流」にフォーカスしたツールが存在していなかったからだ。

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