コロナ禍によるブライダル需要消滅が生んだ「WE ROOM」
そんなさなかに、コロナ禍が発生した。
主力とするウエディング需要はほとんど消滅し、ブライダル業界は窮地に立たされた。八芳園も例外ではない。大半のウエディング予約がキャンセルされたり、規模が大幅に縮小されたりする状況の中で、薮嵜取締役経営管理部長は、場と場をオンラインで結ぶ「ハイブリッドウエディング」の発想を得た。例えば、ホストとなる新郎新婦や少数の親族はリアルの場で結婚式・披露宴を行い、ゲストは自宅からオンラインで参加する形式だ。
既存のオンラインミーティングやウェビナーツールを流用すれば簡単に実現できそうだったが、そもそもの開発目的の違いから、ホストや大人数のゲストの「交流」には力不足だった。そこで、薮嵜取締役経営管理部長は、自社での開発を決断。これまでのリアルな接客経験により蓄積した知見を生かし、「交流」に主眼を置いたオンラインイベントプラットフォーム「WE ROOM」を完成させた。
「WE ROOM」は、リアルな披露宴会場と、オンラインで参加しているゲストをシームレスにつなぎ、ゲストは高画質・高音質のライブ配信を視聴できる。また、オンライン上のゲスト同士でライブ配信を見ながら話ができる機能も併せ持つ。それは、披露宴の各テーブルでゲスト同士の会話が盛り上がるあのイメージだ。まさに、リアルとオンラインを融合させた「ハイブリッドウエディング」である。
しかし、業界の目は冷ややかだった。「ホテル・ブライダル業界は、内向的な業界なのです。過去のやり方を踏襲して、その精度を高めることに気持ちが向いている」。それでも薮嵜取締役経営管理部長は「WE ROOM」の導入を同業他社に働き掛け、ハイブリッドウエディングの意義を説明した。
「私たちの反省点として、リアルな場にいらっしゃるお客さまだけがサービスの対象になるという固定観念がありました。でも、コロナ禍によってオンラインによる会話が当たり前になり、おそらく文化が変わりました。『WE ROOM』を使えば、ゲストの方がどこにいても結婚式・披露宴に参加できます。コロナ禍終息後も、ハイブリッドウエディングは普及させなければいけないと思います」
ビジネスではウェビナーツールよりも多様な使い方ができる
「WE ROOM」の利用はウエディングに限るわけではない。ビジネスの場では、各地を結んだ会議や報告会はもちろん、集団面接、入社式、社内研修、大規模セミナーなどにも使える。主催者が各テーブルを回ってディスカッションに参加したり、参加者同士が他テーブルと行き来できるため、ウェビナーツールなどに比べよりリアルな交流体験が実現できる。
「WE ROOM」の成功によって、同業他業を問わずDX化のコンサル依頼が入るようになったと薮嵜取締役経営管理部長。「しかも、DX化を成し遂げるまで本格的に伴走してほしいという会社さまが増えているのです。おそらく先にITコンサル会社に相談しているはずですが、それでも当社に依頼されるのは、私たちが自社の課題を自分たちの力で解決しようとしているというリアリティーから来るのでしょう」。
DXには社内の業務処理の効率化・省力化やデータの見える化などを行う「守り」と、MA(マーケティングオートメーション)ツールなどを用いて顧客に新しい価値を提供する「攻め」がある。「他社さまから相談されたときは、まず守りのDXを進めて土台を固めてから、攻めに移ることをお勧めしています」。薮嵜取締役経営管理部長がそこまで手の内を明かす背景には、業界全体でDX化を推進し、業界全体が元気になってほしいという強い願いがあるのだ。
株式会社 八芳園
東京都港区白金台1-1-1
八芳園公式:https://www.happo-en.com/
WE ROOM 公式:https://we room.com/
WE ROOM プロモーションビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=YwqkbCU9pOU
Mail:weroom@happo-en.com